研究課題/領域番号 |
25380431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鷲崎 俊太郎 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50306867)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不動産経営 / 土地市場 / 近世 / 近代 / 都市 / 江戸 / 東京 / 三井 |
研究概要 |
平成25年度における本研究は,(1)明治前期における三井組東京所有地の不動産収益率を分析と不動産経営の実態の再検討,(2)これまでの研究をまとめた博士学位請求論文の作成,(3)三菱合資会社地所課作成「収支証書」(明治43年分)の史料収集・データベース作成の3点に力点を置いた。 (1)に関しては,その成果を,「三井における東京の不動産経営と収益率の数量的再検討:1872~1891」九州大学経済学会『経済学研究』第80巻第2・3合併号(2013年9月),17~51頁として上梓した。従来の研究は利回りを求めるにあたって,改正地価を土地資産の評価額として使用してきたが,改正地価は地租の課税標準として地券に記載された法定地価で,土地資産を取得するために費やした期首の資産価値ではない。投資努力のパフォーマンスを表す不動産収益率は,キャッシュフローを期首の資産価値で割ったものである必要がある。以上の定義に基づき,三井東京所有地の不動産収益率を再計算してみた結果,不動産経営として活用された地面全体では,91年には9%台にまで到達した。とはいえ,三井の東京所有地は合計200か所弱にも及ぶ集合体だったために,その不動産収益率は,土地の購入年代によってその推移を異にした。結局のところ,全体の収益率はこれらの平均像だったと結論づけられた。 (2)に関しては,博士論文「近世・近代都市の土地市場分析 ―江戸・東京における不動産収益率の推移と賃貸経営の変化―」を執筆し,慶應義塾大学大学院経済学研究科に提出,平成26年2月28日に学位を取得した。 (3)に関しては,同史料収集とデータベース化を終了した。この成果は,平成26年5月24日開催の社会経済史学会・自由論題報告「20世紀初頭における三菱合資会社の不動産経営と地所課の役割 ―「収支証書」を事例に―」において発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料収集・データ入力と分析・成果の発表と刊行は,当初の研究計画どおりに進捗している。これに加えて,本研究および前回の平成22~24年度科学研究費補助金(若手研究(B))「近代都市の土地投資と不動産経営:三井・三菱における東京所有地の事例研究」の研究成果を踏まえて,博士学位請求論文を執筆し,無事に学位を取得できた点で,本研究がおおむね順調に進展していると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように,現在は,三菱合資会社地所課作成「収支証書」(明治43年分)をもとに,丸の内開発以後における三菱の不動産経営について分析を進めている。この成果は,平成26年5月24日開催の社会経済史学会・自由論題報告「20世紀初頭における三菱合資会社の不動産経営と地所課の役割 ―「収支証書」を事例に―」において発表する予定である。 また,博士学位請求論文に加筆・修正を加え,できるだけ早い時期に図書として刊行することを検討している。
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