本研究では,17世紀末期~20世紀初頭の江戸・東京における不動産インカム収益率の推移を考察し,「土地不動産の安全性と安定性」という見解に対する再検討を図った。その結果,徳川後期のインカム収益率は,三井家所有の江戸町屋敷を事例に,1800年代に4.5%まで上昇したが,幕末期には2%前後まで半減していた。また,明治前期のインカム収益率は,三井組所有地を対象としたところ,5~8%台の水準にあった。他方,三菱の東京所有地を事例とした明治中~後期のインカム収益率は3~7%だったが,90年代に投資した土地では7~12%まで上昇した。以上の研究成果は,学位請求論文としてまとめられ,博士号の取得に繋がった。
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