研究課題/領域番号 |
25380437
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 彰 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00275116)
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研究分担者 |
黄 孝春 弘前大学, 人文学部, 教授 (10234684)
菅原 歩 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10374886)
堀 一郎 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (30113624)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鉄鉱石 / 鉄鋼 / 総合商社 / サプライチェーン / 資源問題 / 資源メジャー |
研究実績の概要 |
本年度の研究は、1)個別研究、2)研究会および3)フィールドワークを軸におこなった。 1)田中は日本の新日鉄住金・JFEスチールと韓国ポスコ社のビジネスモデルまたは企業システム構築戦略の比較研究をおこなった。3社は生産システム(生産設備・技術および生産管理)においては基本的に同質であるが、企業システム(事業単位の配置と組合せ)のレベルでポスコにやや優るために収益性の差が生じていた。ところが企業システムの格差は縮小しつつあり、外部の経営環境の変化によって優劣が決まる度合いが強まっている。黄は、鉄鉱石貿易の金融化の流れ、とくにその先物取引の実態について調べた。シンガポールと中国の商品取引所がその中心的な役割を演じているが、両者の間に制度設計に明白な違いがみられる。菅原は、4・5月は英国にてリオティント社の一次史料収集にあたった(滞在費の一部に本科研費を使用)。またリオティントジャパン社(東京)において同社の経営史に関する研究報告を行い(平成27年3月5日)、実務家からのフィードバックを得ることができた。堀は 、「トランス・ナショナル」鉄鋼企業でありかつ鉄鉱石生産者でもあるアルセロール・ミッタル社(AM社)に関する調査を進めた。現在世界鉄鉱石の3社寡占状況を構成している資源メジャーに対するキャプティブ・マインの存在意義と将来の可能性を探る。 2)11月8日、東北大学東京分室において研究会をおこない、4名が個別研究の中間発表をおこない、今後の課題を確認した。 3)フィールドワークは、新日鉄住金名誉会長・今井敬氏とのインタビュー2度(9月10日、田中。3月12日、田中、菅原)、新日鉄住金大分製鉄所調査(10月10日、田中)、JFEスチール福山地区調査(12月1日、田中、堀、黄)と、数は多くないが要点をおさえた調査ができた。米国中西部の調査は予算の制約により断念した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
田中は、課題となっていた国内鉄鋼業の調査・研究がおおいに進んだ。 黄は、文献資料と業界関係者への取材を通じて鉄鉱石の先物取引の実態についてある程度把握できた。 菅原は、ロンドンでの資料収集が予定通り完遂された。 堀は、AM社のリーマンショック以降の動向を含めて同社の鉄鉱石鉱山所有・開発状況とを明らかにし、昨年度の遅れを取り戻した。 また、昨年度は諸般の事情で開催できなかった研究会を11月8日に開催し、相互の成果について交流するとともに達成度と課題を確認した。共同研究として一段階先へ進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
27年度内に全員の研究成果を取りまとめ、さしあたりワーキングペーパーとする。その後はそれぞれ個人論文または共著論文として適当なメディアでの公表を目指す。 個人ごとの課題は以下の通りである。田中は、26年度に発表した論文をベースに、日韓鉄鋼企業の原料戦略の比較についてまとめる。同時に、研究分担者と適切にコミュニケーションをとり、全体を包括する視点での理論的考察を進める。黄は、先物取引が実際の鉄鉱石貿易に及ぼした影響の解明を重点とし、研究成果をワークショップで発表し、論文としてまとめる。菅原は、資源メジャーとしてのリオティント社の鉄鉱石事業参入の論文を作成する。堀は、AM社の鉄鉱石開発の資源メジャーへの影響やその後の発展の可能性を探り、現在の世界鉄鉱石産業での経済的意義を分析する。同時に他のキャプティブ・マインのUSスチールに関しても分析し、AM社と比較する。
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