研究課題/領域番号 |
25380440
|
研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
市原 博 獨協大学, 経済学部, 教授 (30168322)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 能力開発 / 職業教育 / 工業高校 / 職務能力 / 人的資源管理 / 電機技術者 / キャリア形成 / 技能養成 |
研究実績の概要 |
学校教育が企業従業員の職務能力開発に果たした効果を解明するために、千葉工業高校同窓会の協力を得て、同校卒業者の職務経験とキャリアに関するインタビュー調査を実施した。対象となった企業は、化学、電力、交通、エネルギー、電機、機械と多岐にわたり、貴重な情報を得ることができた。研究会での発表を経て論文にまとめる予定である。 これと平行して、二つの取組を進めた。一つは、戦後日本企業の人的資源管理と教育資格との係わりを歴史的に解明する調査で、おもに電機・鉄鋼・造船企業の組合資料を利用して、両者の結びつき方を検討した。その結果、教育レベルと企業内での職能・職務配分が密接に結合しており、それが従業員の能力開発と処遇・キャリアを規定する関係が戦前期と同様、あるいはそれ以上強く存在していたことが明らかになった。その成果は、連合総研の報告書「『日本的雇用システム』の形成と展開」(2015年4月末刊行予定)の第6章にまとめて発表した。 今一つは、電気学会技術史研究委員会での活動である。電機企業のエンジニアを主体とする同委員会に参加し、委員の方々との交流を深めることにより、エンジニアの方々の職務能力開発の方法と、彼らの能力形成に学校教育が果たした役割について、具体的な事例に接することができた。また、同委員会より、経済史・経営史分野での日本企業のエンジニアに関する歴史研究の内容を紹介する論文を執筆する機会を与えられるなど、理系・文系の間に橋を架けて研究を進める態勢を作ることができた。さらに、経営史研究における労務管理と人材開発に関する研究をサーベイする課題に取組む中で、学校教育とホワイトカラーの職務能力開発との関係を取り上げた研究を検討し、その成果と今後の課題を確認するサーベイ論文を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、千葉工業高校卒業生の方々の職務経験とキャリア展開をインタビュー調査で明らかにすることができた。個人情報に属する事柄をお話くださった皆様に感謝申し上げる。また、電機企業のエンジニアの方々との交流を深めることができ、本研究の主要対象である電機企業の従業員の職務能力開発の調査の基盤ができた。電機企業のエンジニアのキャリア分析のための企業内職務経験データベースの作成もほぼ終わり、この分析のネックになっていた従業員の出身校・専攻分野の情報の不足も、新たな資料へのアクセスにより、ある程度は解決できる目途が立ってきた。 研究成果の発信の面でも、2015年度に開催される日英歴史家会議で報告の機会が与えられ、海外に向けて成果を発表できることになった。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度より進めて来た工業高校教育と職務能力形成との関係を解明する研究の成果を研究会で発表し、そこでの議論を踏まえて論文として発表する。 また、電機企業のエンジニアの職務能力開発と各レベルの学校教育の関係について、収集して来た企業資料の読み込みを進め、また、作成した企業内職務経験データベースと入手したエンジニアたちの出身校・専攻データを突き合わせる作業を行い、実証的に検討して、論文にまとめる。その際、深めて来た電機企業エンジニアの方たちとの交流を活かし、企業情報の保護の面から困難な面もあるインタビュー調査の可能性を追求する。 以上の研究を歴史的に位置付けるために、戦前から戦後にかけての文献調査をさらに進め、その成果を併せて、日英国際会議で英語発表を行う。
|