研究課題/領域番号 |
25380443
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
飯田 恭 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (20282551)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 林役権 / 燃料用木材 / 森林盗伐 / 三月前期プロイセン |
研究概要 |
プロイセン王国ブランデンブルク州ポツダム県の林政関係史料(ブランデンブルク州中央文書館所蔵)を用いて、プロイセン御料林の一管区であるアルト-ルピン森林区の18~19世紀の歴史を調査した。もともと本年度には、同森林区での近隣農民による「林内放牧」の調査を予定していたが、平成26年度に予定していた近隣農民による「燃料採取(粗朶拾集)」の調査を先に行うこととした。また平成27年度に予定していた近隣都市民の御料林利用についても、燃料採取に関して一部前倒しして調査を行った。 従来の三月前期プロイセン史研究は、19世紀初頭のプロイセン改革立法によって、御料林をはじめとする領主有林の利用から近隣の民衆が排除された結果、森林盗伐が多発し、それをめぐる社会紛争が激化したことを強調してきたが、アルト-ルピン森林区の事例分析からはむしろ、御料林当局が19世紀後半に至るまで、近隣民衆の燃料需要の充足に持続的に配慮し、それを実現すべく様々の利害調整を日常的に行っていたことが明らかとなった。従来の三月前期プロイセン森林社会をめぐる通説的イメージを相対化する結果が出たといえよう。 この分析結果については、2014年5月24日の社会経済史学会全国大会(同志社大学)で報告することが決まっている(タイトルは「18~19世紀プロイセン御料林における粗朶拾集―臣民の燃料需要に対する当局の持続的配慮―」)。またこの成果を国内外のドイツ史研究者ないしドイツ史に関心をもつ人々に広く発信するために、ドイツ語論文の執筆を進めてきた。これについては2014年6月を目途に脱稿し、ドイツの学術誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画につき、上記の通り順序の入れ替えや内容の組換えを行ったものの、史料分析から新しい知見が生まれ、学会発表や論文投稿の目途が立ったから。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、アルト-ルピン森林区における農民の「林内放牧」、同森林区における農民の「燃料採取」、都市住民等による同森林区の利用、御料林(国有林)経営に関するマクロ分析の4テーマに関する研究を順次進め、それぞれについて順次個別論文を執筆した上で、最後に全体をとりまとめた著書を執筆することを予定していた。だが、本年度の史料調査の結果、むしろ早い段階でより綜合的な成果(著書など)を出す方向で史料調査を進めた方が良いとの印象を得た。この方向での軌道修正を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ブランデンブルク州中央文書館で依頼した史料の複写代金がより高額になると予想していたが、同館の判断で1コマに2ページまとめて複写された箇所が多く、予想よりも支出が大幅に少なく済んだため、未使用額が生じた。 次年度には本年度とほぼ同様の支出が必要なほか、本年度にはなかった学会発表が入るため、その旅費として有効に利用したい。
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