・これまで、18~19世紀プロイセンの御領林における国王(領主)と農民の関係について、いくつかのテーマに分けて研究を進めてきたが、最終年度にあたり、それらの研究成果をまとめた著書の執筆に取り組んだ。必要な史料調査をブランデンブルク州立中央文書館において行いつつ、タイトルを『農場領主制と森林』(仮)とし、まずは日本語での出版のために、粗い一次稿を作成した。今後推敲を重ね、平成30年度中には脱稿する予定である。また本研究の成果は、近い将来、ドイツ語(ないし英語)の著書としても出版したいと考えている。 ・著書をまとめるにあたり、これまで分析を進めてきた農民の林役権(御領林に対する利用権)に加え、農民の森林賦役(御領林での労働義務)についての分析をもりこむことが有意義かつ不可欠であると考えるに至った。そしてこの農民の森林賦役(領主直営林での賦役労働)についての分析は、それ自体として、これまでもっぱら農民の農場賦役(領主直営農場での賦役労働)に注目してきた農場領主制(グーツヘルシャフト)研究に新たな視点を提供する独立の論文となると思えたため、一時著書の執筆を中断して、このテーマに関する個別論文を作成した。この論文は、平成30年5月に社会経済史学会全国大会で報告することが決まっている。またこの論文を国際学界に問うべく、ある英文ジャーナルに投稿したが、内容がそのジャーナルの守備範囲からそれるということで返却となった。本研究終了後も引き続き、別の国際ジャーナルへの発表を模索したい。
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