本研究によって、戦間期と高度成長期の鉄鋼の企業間取引における多くの相違点と共通点が実証的に明らかになった。 相違点として、カルテルに対する政府の立場,軍需の比重、輸入が国内鋼材市場の取引に与えた影響の度合いなどで,戦前と戦後の違いが大きかった。 しかし,市場性と組織性の両方の共存,市場需給変動とそれによる価格乱高下、市場での変化を緩和しようとする組織的取引の試みとその限界などは,戦間期と高度成長期に極めて似通う現象であった。また、高い自給率,低い輸出比率,政府の政策的な介入なども,1930年代の造船用鋼材市場と戦後高度成長期の鋼材市場との共通点であった。
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