研究課題/領域番号 |
25380455
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
嶋瀬 拓也 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, チーム長 (80353720)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 製紙産業 / 産業組織 / 多角化 / 「選択と集中」 / 経営戦略 / 経営組織 |
研究実績の概要 |
製紙業界誌“Pulp and Paper International”に1975年から毎年公表されている「世界の製紙会社売上高上位100社」のデータを用い、同業界の多角化状況に関する国際比較時系列分析を行った。前年度に成果として示したとおり、世界の製紙会社のうち製紙関連売上高上位100社に占める(製紙)専業会社の数は1980代末から急増したが、これを大陸別にみると、まず1990年代に欧州で増え、その後2000年代には、北米で増える一方、欧州では減少に転じた。専業会社の数は、1986年の25社から、2006年に47社で最大となり、2012年には43社に微減している。一方、上位100社の総売上高に占める製紙関連売上高比率は1995年の79.1%をピークとして低下する傾向にあり、2011年の54.3%で最低となったあと、2012年までに60.2%へと回復している。これらのことは、製紙業界には、当該部門への一層の集中化を図るグループと、逆に同部門の縮小もしくは切り離しを図るグループとがみられることを示唆している。すなわち、製紙業界のトレンドが多角化から「選択と集中」にシフトしつつある可能性がある。製紙業を含む木材関連産業の多角化には、多角化の一般的なメリットとされるリスク分散のほか、原木の供給(生産)調整やサイズ・品質に応じた使い分けなどの面で固有の利点があるとされ、製紙会社自身もかつてこのことを認識していたことが先行研究で指摘されているが、投資判断におけるROE重視の傾向や、森林投資の発達などの環境変化を受けて、企業行動の主流はむしろ選択と集中にシフトしつつあるようにもみえる。このように、地域比較を行ったことにより、地域ごとの多角化状況に違いがあることが明らかになった。これにより、要因分析がより立体的に行えるようになったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
製紙業界における多角化の状況が地域ごとに明らかとなり、残る3年間の方向性が概ね定まった。すなわち、各地域における製紙会社の多角化状況の推移と、地域ごとの社会・経済史とを比較検討することによって、製紙産業の多角化戦略とその変化要因が立体的に把握できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
多角化戦略に関する詳細な実態と変化要因の解明のため、個別企業の経営史分析を行うとともに、それぞれの企業が立地する国・地域における経済史、経営史、土地制度史、開拓史との比較検討を行うことによって、経営戦略・経営組織と社会・経済的諸条件の関連性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)アポイントメントを取得済みで、日程が決まっていなかった調査2件について、調査先の事情により、調査実施時期が確定せず、次年度に実施することとなったため。(2)実施した調査についても、早割航空券等の利用により、当初見込んでいた交通費と比べて大幅に安く済んだため。(3)データベースサービスで取得するデータの量と単価にばらつきが大きく、額の調整が難しいことなどから、年度末にかけて執行が可能なように当初から若干の余裕を見込んでいたため。
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次年度使用額の使用計画 |
理由(1)(2)によって生じた次年度使用額については、今後も調査の実施に向けて調査先またはその候補企業と折衝を続け、日程が確定した段階で実施する。したがって、このための費用に充当する。理由(3)によって生じた次年度使用額ついては、基本的には本年度も同様の対応方針(若干の余裕を見込んで執行)とするが、当該データベースサービスにおいて主に利用していた業界紙(日刊木材新聞)の見出し表示料金が1件5円から10円へ、記事表示料金が1件50円から200円へと大幅値上げとなったため、データベース利用料金に対する支出が大幅に上昇する可能性がある。したがって、このための費用に充当する。
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