他国でみられる巨大複合林産企業が日本にはみられない理由と、そのことが日本の林業・木材産業に与えた影響を解明すべく、日米製紙業の比較史研究を行った。米国製紙資本は、木材パルプの実用化と同時に林地取得を進めた。一方、わが国では、当初は国有林への依存度が高く、昭和に入ると外地を中心に林地取得を拡大させたが、敗戦でその大部分を失った。戦後、日本の製紙資本は、内地の資源状況に合わせ、クラフトパルプ法の導入と、丸太から木材チップへの原料転換を図った。これが製紙業と林業・木材産業との関係を希薄化させ、複合林産企業の形成を阻んだとみられる。またこれにより、木材産業は中小企業性業種としての道を歩むこととなった。
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