1 今年度は、組織開発のプロフェッショナル(以下ODプロフェッショナルという)による実践知生成のメカニズムを明らかにすることを目的とした本研究の最終的なとりまとめを行った。具体的には、前年度に実施した外部コンサルタントを対象としたケーススタディのより詳細な分析を行い、結果を総括した。研究課題は以下のとおりであった。 (1)OD実践に対して有益と考えられてODプロフェッショナルに保持されている信念はどのようなものであるのか (2)それらの信念はいかなる仕事経験(成功経験/失敗経験)を通じてどのように獲得されたのか (3)ODプロフェッショナルが行うuse of selfと彼らが保持している信念とはどのような関係にあるのか (4)以上の結果はODプロフェッショナルの熟達の程度(仕事経験の豊富さ)とどのような関係になっているのか (5)以上の結果からODプロフェッショナルはどのような成長のプロセスをたどっていると考えられるか 2 併せて以上のケーススタディの成果を、成人学習論の理論モデルに照らして考察を加えることにより、OD分野での実践知生成メカニズムの特質について検討した。具体的な研究課題は以下のとおりである。(1)ODプロフェッショナルが実践知を獲得する学習のメカニズムとKolb(1984)の経験学習サイクルモデルとはどのような関係になっているのか (2)どのような「混乱するジレンマ」を感じることによってODプロフェッショナルの学習が促進されるのか (3)「今ここでの現実を扱う」ための実践知はクライアントとのどのような相互作用によって獲得されるのか 3 最後に、ODプロフェッショナルが生成する実践知が、ODのプロフェッショナルではない組織成員のOD実践に対してどのような実務的な示唆を与えるか検討した。
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