研究実績の概要 |
本研究は,半導体産業において,IDM(統合型製造業者),ファンドリ,セットメーカーの三者の企業連携を研究の対象とする.研究到達点として, IDMとファンドリの間の水平型企業連携とIDMとセットメーカーの間の垂直型企業連携の2つの連携を統合し,柔軟性と頑強性を持つ企業連携の仕組みを明らかにすることを挙げた.平成25から27年度は水平型と垂直型の企業連携を分離し, それぞれの特性を明らかにしたが, 平成28年度は, その統合について研究し, 研究成果をオペレーションズ・マネジメント分野の世界大会で最も権威のあるP&OM World Conferenceにおいて発表した.その論文集に掲載されたZhang and Matsuo (2016)では,半導体部品をセットメーカーがIDMに注文する時,頑強性確保のために,セットメーカーが半導体企業のキャパシティリスクの一部を垂直的に負担することにより,IDMとファンドリのキャパシティの水平型の配置が,セットメーカーの需要の一定部分を優先的にファンドリに配分するという制約下で全体最適になることを示した.サプライチェーン寸断に対応する頑強な構造の構築という観点から,IDMを核とする日本の半導体産業が競争力を増すためには,セットメーカーのリスク共有への参加が不可欠であることを示唆している.第2の研究課題であるサービサイジングの研究に関しては, 前年度までに文献調査と三菱日立パワーシステムズにおいてフィールド調査を行い, ガスタービン事業における高価格補充部品に関する在庫管理と長期補修サービスの重要性を示した.平成28年度は, 長期契約デザインの理論的な研究を国際共同研究体制で,ワシントン大学セントルイスのPanos Kouvelis教授らと継続して進めた.
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