先行研究(白木著『国際人的資源管理の比較分析』有斐閣、2006年、白木編著『グローバル・マネジャーの育成と評価』早稲田大学出版部、2014年など)によると、日本人派遣者のコンピテンシーに対する現地スタッフからの評価には、現地上司と比較しても統計的に有意に極めて厳しいものであり、世界本社におけるHRシステムの再構築に加えて、どのように個々人の海外派遣者のコンピテンシーを高めるかということが急務となっていることが明らかである。そのためのツールとして、事前に海外派遣者候補者の適性やコンピテンシーのレベルを測定し、評価するシステムの開発が必要である。 これまでに訪問でき、データ収集ができた地域は中国、タイやインドネシアなどをはじめとするアセアン、それにインドであった。海外派遣者の年齢層は40歳代後半が中心というかなりシニアな層が対象となっており、現地ではミドル・マネジャー以上のトップ・マネジメントとなっている人がほとんどであった。 分析結果の一般性を担保するには対象地域のヨーロッパ、北米への拡大、さらには、対象層の年齢的拡大、すなわち、20代、30代層へと研究対象を拡大する必要がある。このため、そのようなことを企図しながら研究を進めていた。 上記の課題を達成するために、研究を開始するにあたり研究期間を通して文献および資料の収集ならびに読解、分析をし、論文掲載、図書出版をし、さらに最終年度にむけて研究代表者と協議して理論の構築をし、システム向上のためデータを採取し、さらにはデータ・マイニング手法により、評価システムも開発に移行する予定であったが、研究半ばにして代表者が他界してしまい、所期の目的を達成するに至っていない。
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