研究課題/領域番号 |
25380471
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
高尾 義明 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (90330951)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経営構想 / 組織間伝播 / 事業ビジョン / 経営理念 / アイデンティティ / 離転職者 / 経営組織 |
研究概要 |
本研究は、新しい事業ビジョンや経営理念といった経営構想の組織横断的伝播の解明を図るべく、以下の3つのサブテーマに取り組んでいるが、初年度である平成25年度の各テーマごとの成果は以下の通りである。 (a)「組織外伝播プロセスについてのミクロレベル分析」については、経営理念の組織間伝播について日本航空再生における事例について調査を行い、京都大学経営管理大学院主催のシンポジウムにおいて発表を行った。また、組織を一時的に離れた経験をもつ従業員が経営構想の伝播に影響をもたらしうる可能性に新たに着目し始め、そうした経験をもつ従業員に対して探索的な質問紙調査を実施し、その分析結果を社会・経済システム学会の年次大会において発表した。 (b)「人の移動に伴う経営構想の組織外伝播についての探索的事例分析」については、当該組織を離職し別の組織に移った元従業員が経営構想や知識の伝播に与える影響について組織アイデンティフィケーション論を参照しつつ考察するとともに、離職経験者に対して質問紙調査を実施した。その分析結果について組織学会にて発表を行い、同内容が『組織学会大会論文集』に掲載された。また、人の移動に関連して、リーダーの交代がフォロワーにもたらすインパクトに関する調査結果をとりまとめ、所属大学の紀要(『経営と制度』)に公表した。さらに、リクルート社、Digital Equipment社の退職者にインタビュー調査を実施した。 (c)「アイデンティティ・ダイナミクスからの理論枠組みの構想」については、これまでに実施してきた文献レビューの成果を組織学会(編)『組織論レビューI』にて公表するとともに、より広範な文献レビューを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究全体としては、3カ年計画の1年目としておおむね順調に進展している。順調に進展していると評価した理由をサブテーマ毎に述べる。 (a)「経営構想の組織外伝播プロセスについてのミクロレベル分析」については、特許データの分析は研究成果を公表できる段階には至っていないものの、組織を一時的に離れた経験をもつ従業員に焦点を当てるという新たな視点を構想し、調査結果を学会発表という形で公表するまでに至った。 (b)「人の移動に伴う経営構想の組織外伝播についての探索的事例分析」については、離転職者の影響について質問紙調査を実施し、分析結果の一部を公表した。なお、同調査についてはさらなる分析を実施し、平成26年度に国際学会で発表する予定である(アクセプト済)。また、インタビュー調査も円滑に立ち上げることができた。 (c)「アイデンティティ・ダイナミクスからの理論枠組みの構想」については、文献レビューが当初予定通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
個別課題毎に進捗は多少異なるものの、研究構想時の計画を変更するまでには至るような進展の遅れは生じていない。したがって、現状の進展を踏まえた若干の修正を施しつつも、3つのサブテーマについておおむね当初計画通りに研究を推進していく。各サブテーマ毎については以下の通りである。 (a)「経営構想の組織外伝播プロセスについてのミクロレベル分析」については、特許データを活用した事業ビジョン伝播の分析を進めるとともに、経営理念の組織間伝播の事例についてのインタビュー調査を行う。また、新たに注目した組織を一時的に離れる経験についても、引き続き質問紙調査などを進めていく。 (b)「人の移動に伴う経営構想の組織外伝播についての探索的事例分析」については、スノーボールサンプリングによってインタビュー調査をさらに展開する。また、組織に在職し続けている従業員が離転職者とどのような関係を維持しているかについて、いわゆる「同期」に注目して調査を実施する。 (c)「アイデンティティ・ダイナミクスからの理論枠組みの構想」については、組織アイデンティティ論、組織アイデンティフィケーション論についての文献レビューを継続し、社会システム理論なども参照しつつ経営構想の組織外伝播を把握する理論枠組みの構築を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費の0.3%程度の残額は生じたのは、物品費等の単価変動等による。 消費税増税に対応して物品費・旅費等で使用する。
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