研究課題/領域番号 |
25380478
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
飯沼 守彦 日本大学, 生産工学部, 准教授 (70222825)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナレッジマネジメント / 組織学習 / モデル化 / エージェントベースシミュレーション |
研究実績の概要 |
文献調査をもとに、外部知識統合を考慮したナレッジマネジメントをモデル化するための基本的な概念枠組みとして検討している、知識獲得、知識吸収、知識変換の4つの能力によって構成される「知識吸収力モデル」と個人学習と組織学習の関係をベースとした「組織学習モデル」との融合モデルに、さらに外部知識を効果的に統合するための条件として、外部知識と組織内部の知識の「オーバーラップ」という観点を加え、外部知識統合モデルの拡張を行った。 また同時に、外部知識統合に関するエージェントベースモデル構築とシミュレーション結果を評価するための枠組みとして、「知識の生態系」という概念を新たに構築した。知識の生態系では、知識を自然界における種に、知識を所有する組織メンバーを種に属する個体とそれぞれ見なす。また、組織メンバー間の対話による知識創造と知識伝達・共有の結果として生じる知識の時間的変動を、自然界における種間の相互作用の結果として生じる種の時間的変動と類似のものとして捉えることができると仮定する。このような仮定のもと、知識の時間的変動を、その知識を担う組織メンバーの数の時間的変動によって捉えようとするものである。この枠組みを用いることによって、知識という質的な問題を量的な問題に変換し、外部知識統合に関するエージェントシミュレーションの基礎が与えられたと同時に、今までのナレッジマネジメントではあまり考慮されていなかった組織内における知識変動のダイナミズムのマクロ的視点を提供することが可能となったと考える。今年度は、この「知識の生態系」概念にもとづき、予備実験レベルではあるが、外部知識統合に関するアブストラクトモデルをいくつか作成し、組織空間の密度、組織メンバーの行動力、知識の類似性が組織イノベーションにつながる可能性について検討し、いくつかの知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外部知識統合のための理論的フレームワークにもとづき、エージェントベースアプローチのための基本モデルを構築し、予備的なシミュレーション実験を行い、外部知識統合に関する基礎的検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
外部知識統合に関する有効な概念モデルとして、文献調査によって明らかになった知識吸収力モデルと組織学習モデルとの混合モデルをベースに、知識の生態系概念を取り入れ、より精緻な外部知識統合に関するシミュレーションモデルを構築する。さらに、シミュレーション実験を行うことによって、ゲートキーパーや知識のオーバーラップ等の外部知識統合への影響や、外部知識を統合した場合の組織内知識変動のダイナミズムについて新たな知見を得ることを目指す。
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