研究実績の概要 |
外部知識統合に関するエージェントベースモデル構築とシミュレーション結果を評価するための枠組みとして考案した「知識の生態系」という概念に基づき、外部知識統合に関わると考えられる諸条件を組み込んでシミュレーション実験を行った。「知識の生態系」概念は、知識を自然界における種、組織メンバーを種に属する個体とそれぞれ見なし、組織内知識の時間的変動を、自然界における種間の相互作用の結果として生じる種の時間的変動に対応付けて捉えようとするものである。そのねらいは、比較的長期的な視野で、組織的知識創造を含む組織内での知識状況を検討することを可能にすることである。 本研究では、組織的知識創造理論の基本モデルと考えられているSECIモデル(Nonaka & Takeuchi,1995)で示された個人的知識が組織で共有されることを通して組織的知識が創造されるという考え方、すなわち、知識の創造と知識の伝達、それらを効果的に行うための要因としての対話構造を、知識の生態系の概念に基づきモデルに組み込んだ。 構築されたモデルに基づき、シミュレーション実験を行い、組織イノベーションを実現するための組織的要因であるイノベーション支持者(武石他,2012)、ゲートキーパー(Allen,1977)等組織内の知識普及に関するキーパーソンの必要性とその効果に関して検討した。その結果、新たな知識や革新的な知識が組織内で普及していく際のキーパーソンの構成比率に関する傾向が明らかとなった。さらに、外部知識を取り入れて知識が創造された場合、外部知識によらず組織内で生成された新たな知識よりも、普及には時間がかかるが組織内で大きな勢力をもつ知識になる可能性があることが明らかとなった。
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