本研究は、わが国企業とNPOとの協働の実態を調査し、協働から創出される価値の社会的および経済的意義を検証することを目指している。研究対象は、NPO法人パートナーシップサポートセンターが実施する「日本パートナーシップ大賞」(2002~2014年)の応募事例約300件とし、協働事例のデータベース作成、協働モデルの体系化、協働成果の社会的・経済的インパクト評価、共通価値の創出実態について実証分析を行った。企業サイドからみたNPOは、社会貢献活動推進の有力なパートナーという位置づけが多く、NPOが事業活動の有力なパートナーであるという認識を持つ企業は極めて少ない。ポーターが提唱した共通価値仮説では、企業とNPOが相互に事業パートナーとしての意識と実効性ある活動を行うことが必要であると指摘している。本研究では、企業とNPOの協働事例に関する実証分析を通じて、現時点における協働の到達点と課題を明らかにし、共通価値の創出を可能とする実効性ある協働のあり方について考察したいと考える。企業とNPOの協働を巡る論点は次の二点に集約される。第一は、企業のナレッジを活かした協働事業ができていないことである。協働から何を見出すのかという検討が不十分なままNPOとの協働を始め、ほとんど例外なく事業上の成果を生まずに終わっている。企業が事業戦略上の協働の意味を理解していないことが主な原因である。第二は、協働における長期ビションの欠落である。企業の多くはNPOへの資金拠出のみで、協働から得られるナレッジを自社の事業領域に取り込むことに消極的である。また、単年度ベースでの成果を求めるあまり、協働事業の成果が矮小化する傾向がみらる。約300事例の分析を通じて、こうした課題を克服するための協働のフレームワークを提示することが本研究の使命と考える。
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