本研究の目的は、新人が企業組織に適応していくプロセスである組織社会化の促進状況を経時的に把握することであった。具体的には、組織社会化にかかわる諸変数を経時的に測定し、その変化状況を記述すること、および組織社会化の諸作用と効果の変遷を把握することであった。同一年度に入社した複数企業に所属する514名に対し、組織社会化を促す組織側からの働きかけを意味する組織社会化戦術、組織参入を果たした個人の側からの適応行動であるプロアクティブ行動、組織社会化の一次成果としての学習、二次的成果としての態度変数(組織コミットメント、職務業績)等について、入社後3ヵ月時点と入社1年毎の5年間、継続的な測定を行った。組織社会化戦術については、体系的な育成方針を意味する制度的社会化戦術は、入社以降、年を得るごとに低下していく傾向が見られ、3年程度で安定する様子が見出された。現場単位でのOJT的な育成を意味する個別的社会化戦術はやはり3年程度まで上昇を続け、以降は安定する傾向が見られた。プロアクティブ行動については、職務フィードバックの探索、社交への参加、部門外との交流および部門間関係の学習という4つの下位次元が見出され、いずれも初年度を最高に、入社2年段階で落ち込んだ。その後若干持ち直すが、その水準は初年度ほどではなかった。組織社会化の二次的成果としての組織コミットメントは3年段階まで低下していたが以降はやや持ち直していた。また職務業績は5年間一貫して上昇していた。それらの効果、ならびに社会化指標新尺度の開発と予期的社会化段階としての採用過程における組織側の選抜過程についても検討を行った。当研究課題に関するさらなる成果は2017年度以降、随時公表していく予定である。
|