本研究の意図は、日系海外進出企業の有効性を高める組織コントロールのあり方を探求することであり、最終年度では、これまでに積み重ねてきた研究成果を踏まえ、環境変化の激しさに直面する日系企業においてダイナミックな組織ルーティンを実現する組織コントロールのロジックを明らかにした。 アジア進出の日系企業は、ビジネス環境の変化が激しいという点から、欧米進出の日系企業と比べ、組織コントロールのあり方が異なることは想定されたとおりである。その生起する実態のロジックを明らかにするため、「何故、企業は既存のコントロール体制を見直すのか?」、「それはどのような根拠を持って遂行されるのか?」という問題設定のもと、昨年来、現地で様々な実態調査、インタビュー調査を行い、データの集積・整理を行うとともに、ディスコース分析を進めた。その結果判明したのは、日系海外企業の有効な組織コントロールは、本社における重要性に影響されることであり、重要度が増せばますほど既存コントロールの見直しが促進されることである。そしてその根拠となるのが、現地業務において不祥事の発生を阻止する安全性・確実性という基準であり、それが組織コントロール見直しの裏付け根拠として共有認識されることの必要性である。 昨年度、日系海外進出企業の組織コントロール問題の解明が不十分として研究が繰り延べられたわけだが、本最終年度の研究で、ビジネス環境が激しく変化するの中でダイナミックな組織ルーティンを実現する組織コントロールのあり方について、ようやく明確な結論を引き出すことに至った。そして、その理論的な意義は組織コントロールの新たな側面の発見であり、有効な組織コントロールを実現するための示唆が得られるという点で実践的にも意義があり、本研究はその目的をほぼ達成した成果を生み出すことができたといえる。
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