研究課題/領域番号 |
25380486
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
馬場 英朗 関西大学, 商学部, 准教授 (20555247)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会的企業 / 非営利組織 / 社会価値 / 子育て支援事業 |
研究概要 |
平成25年度は、主に社会的企業における財務評価モデルの理論的枠組みを整理することに取り組んだ。まず、社会的企業の財源的課題とコスト構造を探るために、多くの社会的企業が資金源としている行政からの委託事業について、費用積算の問題点を文献調査等によって洗い出して、国際公会計学会において発表を行った。 続いて、社会的課題に取り組む非営利組織の収入構造を明らかにし、海外の研究者に情報提供するために、財務データを統計的に分析して英語論文に取りまとめた。また、これらの非営利組織による事業報告の課題を探るために、2010年に策定されたNPO法人会計基準を市民や寄付者がどのように捉えているか、アンケート調査等によって実証的に分析し、国際学会(ISTR:International Society for Third-Sector Research)及び日本社会関連会計学会において発表した。さらに、次年度以降の研究に向けて社会性評価のフレームワークを整備するために、著書『非営利組織のソーシャル・アカウンティング』を刊行した。 そして、これらの研究成果をベースとして、次年度に取り組む予定である子育て支援拠点事業の具体的な評価指標づくりについて、横浜市で子育て支援センターを運営する10団体ほどのグループと意見交換を行った。また、子育て支援拠点事業の業務分析に関する文献収集を行うとともに、社会的企業のインパクト評価が広く試みられているイギリスにおいて内閣府、社会的企業、コンサルティング会社などの視察を行うことにより、社会インパクトを含めた社会的企業の評価モデル及び分析ツールを策定するための知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究によって、社会的企業の評価モデルに関する文献調査及び概念整理が概ね完了した。また、イギリスにおける先進事例も調査し、今後の研究に向けた新しいアイデアが得られた。したがって、次の課題である具体的な評価モデル及び分析ツールづくりに向けて、概ね順調に準備が進んでいる状態である。 また、調査対象である横浜市の子育て支援団体グループとも適宜、連絡を取って今後の研究方針をすり合わせている。ただし、平成25年度に予定していた現場団体のヒアリング調査については、上記の概念整理とイギリス視察が終了してから行う方が効果的であると考えて、平成26年度に実施することに変更した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は夏期に1週間程度、子育て支援拠点を運営するNPO法人などの社会的企業に対してヒアリング調査を行う。まず予備調査として、3~5団体程度にヒアリングを行い、社会的企業の社会インパクトを測定するための評価指標に関する試案を作成する予定である。そして、横浜市で子育て支援拠点を運営する10数団体に対して、これらの試案について解説するセミナーを開催して、評価指標のブラッシュアップを図りたいと考えている。 さらに、当研究の最終年度にあたる平成27年度には、より多くの団体に対して評価指標を実際に適用して、実効性のある社会的企業の評価モデル及び分析ツールを策定するとともに、社会的企業の存在意義をアピールする社会性報告のあり方について検討を加える。調査対象としては、上記の子育て支援拠点を運営する10団体程度を予定している。また、これらの研究成果を論文や報告書にまとめて、広く社会に普及することに取り組むとともに、子育て支援以外の事業を行う社会的企業への適用可能性も探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は予定していなかった、イギリスにおける社会的企業の先進事例調査を行ったため、旅費が予定よりも増加している。ただし、平成25年度に予定していた現場団体の実地調査を、平成26年度に変更したため、当年度は人件費及び謝金が生じていない。その結果、約5万円の次年度使用額が生じている。 現場団体の実地調査における人件費及びヒアリング謝金に充当する予定である。
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