平成27年度は、過年度に進めてきた社会的企業のコスト構造や、利害関係者が求める情報ニーズに関する研究を基礎として、社会的企業が生み出した成果(社会価値)を測定し、報告するための仕組みであるインパクト評価のフレームワーク構築と、その試行的実践に取り組んだ。 まず、先進的なインパクト評価手法の開発に取り組むイギリスの事例を調査し、『公益・一般法人』に論文を取りまとめた。さらに、世界的に関心が高まっている社会的投資収益率(SROI)およびソーシャルインパクト・ボンド(SIB)の枠組みのなかで、インパクト評価がどのように活用されているかを分析し、日本NPO学会にて発表するとともに、同学会誌に論文を投稿して掲載が確定している。そして、2016年6月刊行予定の書籍(塚本一郎・金子郁容編著)にも分担執筆して掲載が確定している。 また、研究期間全体を通して得られた研究成果を活用するために、ひょうごコミュニティ財団による外国にルーツを持つ子どもの支援プロジェクトや、日本芸能実演家団体協議会による芸術団体の経営基盤強化のための調査研究にも参加協力し、これらの活動や組織が生み出す社会価値を利害関係者に説明し、活動基盤の強化に活かすための実践的方策に関する助言を行った。さらに、内閣府の「共助社会づくり懇談会 社会的インパクト評価検討ワーキング・グループ」および大阪府の「SIBを活用した大阪独自の生活困窮者自立支援のための新たな仕組みづくり研究会」の構成員も務め、研究成果を政策に活かすことにも取り組んだ。 その結果、社会的企業の財務分析・評価モデルを完成させるにはいまだ課題が残されているが、その前提となるインパクト評価のフレームワークを整理することができ、政策的な実践に向けた議論にも研究成果を活かすことができた。なお、平成28年6月末にこれらの研究成果を国際学会(ISTR)で報告する予定である。
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