過去7年間のインタビュー調査の結果について、技術系と事務系の特徴的な相違およびパフォーマンス別の特徴的な相違などについて、定量的および定性的な分析を組み合わせて総合的に分析することができた。その結果、日本企業の若手社員や中堅社員が新卒入社から10年で一人前になるまでのプロセスやメカニズムのモデルを明らかにすることができた。 およそ10年間で一人前のビジネスパーソンに成長するためには、3年ごとに初期、中期、後期に区分すると、それぞれの時期に特徴的な学習内容が存在していた。入社直後の初期の3年間では、担当業務に関する基本的な知識やスキルだけでなく、仕事に対する基本的な取り組み姿勢である「スタンス」を確実に習得することが重要な鍵を握っている。そして、中期の3年間では、こうしたスタンスの中でも「セルフ・エフィカシー」(自己効力感)を高めて自信をつけることが重要である。最後の3年間である後期では、それまでのスタンスの確立を踏まえて、事業や組織に関する「スコープ」(視野)を拡大して大局的な意思決定ができるようになることがパフォーマンスの高い一人前になるための要件であることが示唆された。 そして、こうした新たな知見を踏まえて、実際に若手社員や中堅社員を育成する管理職に必要な知識や行動を考察することができた。具体的には、彼らの成長プロセスの段階に従って、仕事の与え方や関わり方が異なる「Situational OJT」(状況適応的OJT)のモデルを考察した なお、この研究成果について、ビジネスパーソンなどの実務家にも分かり易く伝えるために書籍として刊行し、こうした知見を広く世の中に知らしめる準備もできた。
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