本研究の目的は、「顧客である自動車メーカーの要求に応えるマネジメント」と「自社の開発プロセスの効率化を継続的に図るマネジメント」という2つの視点から、自動車部品メーカーの製品開発マネジメントを明らかにすることである。 まず、前者については、先行研究のサーベイ及び聞き取り調査によって、自動車メーカーと自動車部品メーカーの「信頼関係」が重要であることが分かった。特に、相互の意図と能力に対する期待の中でも、共存共栄を目指す関係的信頼の存在が決定的に必要となる。機密情報の漏洩を考えることなく、相互に情報を提供し、共有することが可能になるためである。以上については、最終年度(平成28年度)に「長期的関係による信頼構築──自動車部品の系列取引システム」(加護野忠男・山田幸三編著『日本のビジネスシステム―その原理と革新』有斐閣 2016年、第2章)にまとめ、公刊している。 次に、後者については、特にトヨタ自動車とそのサプライヤーに焦点をあて、「自工程完結」を取りあげて研究を進めた。自工程完結とは、従業員一人一人が、後工程(カスタマー)のことを何よりも先に考えて、決して悪いものは造らず、仮に造ってしまっても後工程には流さないということを意味するものである。その成果については、2014年6月には、京都大学で行われた国際会議Gerpisaにおいて、自工程完結の効果について報告("Applying the Autonomation Concept to White-Collar Departments at Toyota Motors: The Basics of JKK(Ji Koutei Kanketsu)")した。最終年度には、公刊には至らなかったものの、上記の発表をもとにした論文を執筆した。
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