三カ年の本テーマでの研究活動により以下の実績、成果を得ることができた。 ・両立問題と同質的と見なされてきた出産・育児と両立との課題としての異質性、独自性の特定とその検証を独自調査に基づく統計的分析により成功した。 その異質性は、「時間的予測困難性」「経済負担の予測困難性」「同時多発性」「負担逓増性」「空間的分離性」「介護者の高職位性」「複雑な当事者性」「被援助者との葛藤」「投資効果性の差異」と命名した。 ・三種の大量標本調査(二種は既存調査、一種は当該科研費による独自調査)の多角的な分析により、民間企業における従業員の仕事と老親介護との両立における阻害要因及び促進要因が多く発見され、統計的に検証された。一例として、職場要因を示すと以下のとおりである。抑制要因では「社外の取引先との仕事が多い」「国外出張がよくある」「同僚や部下とはプライベートな話題は話しにくい」→「個人の成果が厳しく評価される」等々である。一方、促進要因では、「女性」「情報共有等のための打合せを行っている」「有休がとりやすい職場」「何でも話せる上司」等々である。 以上の定量調査分析と検討に加えて、大手企業11社の人事部門での定性調査・ヒアリングの情報を総合して、今後の民間企業における老親介護との両立実現のための支援策のあり方について検討を行った。出産・育児での両立支援制度とは異なる独自制度の構築を必要性について考察を行った。 ・以上の研究成果の一部を2015年1月に学術文献として出版を行なった(『介護者クライシス(旬報社)』)。加えて、同文献の内容については朝日新聞、山梨日日新聞、日本テレビ、テレビ東京、FM東京等で放映され、日本社会における当該問題の重要性、喫緊性を広く知らしめる実績を得ることができた。
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