平成25年度の高知県内企業を対象とした労働時間管理に関するアンケート調査、平成26年度の高知県内企業および県外企業を対象に実施したヒヤリング調査の結果をもとに、平成27年度は、高知県内の中小規模(製造業等)の企業を対象に、介護等の家族ケアを抱える労働力の労働時間管理の革新課題に焦点をあて、追加のヒヤリング調査を実施し、総合的な分析を行い、考察を深めた。その成果は以下である。 調査対象の高知県内の中小企業において、家族ケアを抱え時間的制約のある人材活用のための労働時間管理について、労働者側の利用ニーズが顕在化している企業が現状では多くなく逼迫した状況にはない。しかし、近い将来において、とくに介護を抱える労働者の増加が見込まれ対策が必要との認識は高い。現時点では、労働者側の時間調整の必要性と企業側の実施容易性の観点から、全体一律の制度改革よりも、個別対応での労働時間調整が実施されており、今後も個別対応で調整をはかる方法を対策の中心としている。その具体的な方法は計画的で規則的な労働時間をベースにしながら1日のうちの短時間(1~2時間)を個別に調整するものである。その時間調整を可能にする企業内の仕組みとして、多能工による代替可能な組織体制、個別のスケジュールと状況についての情報共有、休暇等の計画的制度運用などである。 少子高齢者社会における地域企業の今後の人材活用において、介護を抱える労働者の増加に伴う課題の顕在化が見込まれるが、その際に必要な時間管理上の対応は、労働時間の大幅な改革にはなく、労働者側の必要性と企業側の実施可能性の観点から、上記のような、短い時間調整が可能になる体制と制度の構築にある。 以上について、口頭及び論文にて発表した。
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