研究課題/領域番号 |
25380508
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
長谷川 光一 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30426655)
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研究分担者 |
永田 晃也 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50303342)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | デザインイノベーション / 中小企業 |
研究実績の概要 |
中小企業のデザイン活動を対象とした調査を実施した。国の経済活動において、中小企業の果たす役割は大きい。2012年2月時点で日本には386万社の企業が存在する。このうち中小企業は全体の99.7%を占めている。2009年から2012年にかけ、日本の中小企業の数は8.3%減少した。これはいわゆるリーマンショックによる影響が直接的・間接的に影響したものと考えられる。しかし、経営基盤が弱い中小企業は、景気変動の影響や大企業の動向などによって自社の経営が大きく揺らぐことがある。どのように経営リスクを分散するか、景気変動に負けずに存続するかが重要な経営課題となる。中小企業にとっては、取引先を増やす、新製品の開発等が持続的な成長と存続を実現する手段として考えられる。しかし、先行研究によれば、取引先を増やすことが出来た中小企業は半分程度であり、残りの半分は現状維持か減少傾向にあるとされている。また、大手企業の下請けが事業の中心となっている場合、新製品開発も容易ではないことが推測される。日本の大企業は、デザインより技術的機能・性能を重視して製品開発を行う(長谷川,2012)ことが知られているが、中小企業も同様であると考えられる。そこで、技術志向の中小企業がデザイナーと共同でどのように新製品を開発しえたのかを事例を元に調査した。東京都の事例では、企業の持つ技術を元にビジネス提案を受け入れ商品開発を行うという施策に応募した企業で、ヒット商品が生まれた事例が見出された。成功要因、プロジェクトが最終的な商品化まで見据えたデザイナーが関与したこと、施策がプロジェクトに関する包括的支援を行ったことなどが挙げられる。しかし、デザインを製品開発に活用することの可能性について中小企業は気がついていない場合が多く、どのように企業がデザインに気がつくのかについては、今後の調査が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中小企業を対象としたデザインマネジメントの事例を調査し、デザインイノベーションに関する現状と課題を把握した。 その結果、技術的にポテンシャルのある企業は、きっかけがあれば既存の技術を利用し、これまでと異なる市場向けの新製品を比較的容易に開発することが明らかとなった。 問題は、特に中小企業の場合は既存事業が大手企業の下請けであることが多く、自ら製品開発プロジェクトを実施したことがないこと、デザイン部門等を自社内で保有していないため、どのようにデザイナーを活用するかについての経験が少ないことなど、課題要因を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今回の調査を基にして質問票を設計し、データを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を行う途中で、大企業と中小企業のデザイン活動については想定以上の差異があることが明らかとなってきた。大企業は近年になってデザイン活動の意義について理解し、積極的な投資を行う企業も見られるが、中小企業は、デザイン活動が自社にどのような意義があるのかについて十分に把握していない。そこで、中小企業のデザインイノベーションの取り組み状況を質問項目に取り組むため事例調査を行った。また、質問票調査の下準備としての研究開発拠点の実態調査を実施し、質問票調査は翌年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に行った調査結果を基に、質問票を設計し、質問票調査を行う。
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