国際的なデザインコンペティションを実施し、木工クラスターとして世界的な地位を獲得した地場産業である旭川地域を対象として調査を実施した。調査手法は現地での関係者へのインタビュー調査および文献調査である。旭川木工クラスターには複数のキーマンが存在し、長い時間をかけてデザインに関する地域文化を醸成したこと、地域にある良質の木材と技術力に、外部デザイナーのデザイン力が融合したこと、コンペティションそのものがデザイナーにとって魅力的であったこと、行政の協力があったこと等により、旭川地域は世界中のデザイナーが応募するコンペティションを作り上げると共にデザイナーとのネットワークを形成することに成功した。現在、旭川地域の木工クラスターは、高品質・デザイン等に関するブランドイメージを確立している。一方で、コンペティションにより生まれた新製品には模倣品が生まれている事例が見られた。どのように専有可能性を高めるかの対策をすることが、持続的な競争力を持つクラスターとして必要となると推測される。 模倣品対策として商標を用いた事例として、八代市の農業クラスターを取り上げた。同地域は国内において強い競争力を持つトマト産地を作りあげることに成功した。内部変化として暖房技術の開発、玉葱や藺草からトマトへの転換による作付け面積拡大が行われたこと、外部環境の変化として長距離輸送を可能とする品種の開発と冷蔵輸送の開発があったことなどにより、1980年代から生産量が伸び、1990年代に生産量日本一となった。また、1990年代に入ると高糖度トマトの販売を開始し、産地としての競争力を高めた。模倣品対策等のために商標登録を行い、産地ブランドを確立することに成功した。競争力を構築した後の持続的な地域発展のためには知的財産権の適切な活用が重要になると推測される。
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