研究課題
本研究の目的は、多国籍企業の中国におけるIPOに焦点をあてて、中国IPO設置の動機やIPOの役割とグローバル調達の戦略に与える影響について日欧米多国籍企業の国際比較を行い、グローバル調達の拡大を強化している日系多国籍企業の実態と直面する課題を明らかにする。昨年度で行った、米系多国籍企業を研究対象にした事例研究では、同社の中国での調達活動及びその問題点を考察した(2014年学会報告)。事例から発見事実として、まず、中国IPOはグローバル調達の機能にとどまらず、サプライヤー基盤の整備と強化の機能も発揮することで、新たな生産拠点の中国シフトを後押しすることになり、本国本社の対中投資を促進している。また、本社における職位とそれに伴うパワーを持つ駐在員は、中国IPOの持続的な成長やK社の中国での調達の推進に重要な役割を果たしている。生産のみならず、調達やサービスなど海外拠点の機能の多様化が進む中、海外に派遣する駐在員の役割やグローバル人的資源の育成の重要性が浮き彫りになった。それまでの研究調査と議論を踏まえて、本年度は、日系多国籍企業を研究対象にし、事例研究を通じて中国での調達活動および問題点を考察した。グローバル調達に関する意思決定がIPOに移管する傾向にある欧米系多国籍企業に比べ、日系多国籍企業のそれは本社に集中している傾向が見られる。本事例により、全社のグローバル調達戦略、さらに対中直接投資に大いに影響を及ぼす欧米系IPOに比べると、日系IPOは調達活動の実行にとどまっていると言えよう。グローバル調達を促進するには、異なる事業分野間の横連携の強化や、IPOの責任範囲の拡大など課題に取り組む必要があると示唆される。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件)
Supply Chain Management: an International Journal
巻: Vol.21, Issue1 ページ: pp.45-52
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『アジア経営研究』
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