研究課題/領域番号 |
25380518
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
井手 亘 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (20167258)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非正規従業員 |
研究概要 |
組織における正規従業員、非正規従業員の仕事の状況や就業における差については、組織レベルにおいて役割や期待されるものや、組織内での位置づけなどの違いに起因している可能性がある。これに関して各種の報告書や文献を検討した。同時に、マルチレベルの分析手法についても、最近の研究動向について調査、検討を行った。雇用の継続や雇用形態の選択に関する職場の実態の記述的調査としては、これまでの調査結果の再検討を引き続き行ったが、それに加えて新たなアプローチとして、質問調査では得られない組織や個人の問題点が反映される可能性のあるデータであり、仕事上のトラブルや悩み事について投稿されることの多いインターネット上の相談室のデータに注目した。インターネットの相談データの特徴は、社内で相談する場合に生じる職場での立場や人間関係への影響、相談しにくさといった点を回避することのできるメディアのデータであり、従来、調べることのできなかった側面の特徴を反映する可能性があることである。データは、国立情報学研究所の公開しているYahoo知恵袋のログデータである。収録期間は2004年から2009年で、質問1,600万件、回答5,000万件であった。そこにおいて「派遣、アルバイト、パート」というカテゴリに含まれていたデータの中の労働に関する投稿を分析した。その結果、投稿では募集・採用、就職活動にあたるものが多く、また、その内容には情報的援助だけではなく評価的な援助も少なからずあった。データには従来の職場の調査では得られない仕事探しや就職の問題が多く含まれていたことから、このようなデータとその分析は、一般的な質問調査を補完するものとして注目すべきものであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織における正規従業員、非正規従業員についての各種の報告書や文献の収集と検討は予定通り進めることができている。マルチレベルの分析手法についても、最近の研究動向について調査、検討を行ない、今後の分析をすすめるための準備を進めることができている。雇用の継続や雇用形態の選択に関する職場の実態の記述的調査としては、従来注目されることが少なく、分析や検討の進んでいないインターネット上の相談室のデータという新たなデータからのアプローチが可能となったことは、研究において大きな進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定通り、これまでの研究の成果から、均衡処遇制度のもとでの非正規従業員の勤続意思、雇用形態の選択についてグループレベルの変数と個人レベルの変数を同時に含むモデルを構築する。これをもとにした調査計画に従って、調査票の作成と調査の実施を行い、非正規従業員に対する調査を行う。比較のために必要な場合は正社員についても調査を行なう。調査項目については、従来からの記述的調査にもとづいて組織レベルの変数、個人レベルの変数の指標となる項目を決定する。 調査結果をもとに、非正規従業員についてのモデルを検証する。分析にあたっては、対象とした職場によっては複雑な媒介変数、調整変数の影響が考えられるので、組織レベルの変数、個人レベルの変数の関係に階層線形モデルを中心にした統計モデルをあてはめることで、最適な解の検討を行う。データにより実証されたモデルについては、組織レベルで影響する変数と個人レベルで影響する変数のそれぞれについて、過去の研究で明らかにされてきた理論との比較を行うことで、非正規従業員の勤続意思や雇用形態の選択について理論的な検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年度の調査の準備のため、2013年度に予定していた物品の購入について、購入対象の選定が遅れたため年度内に購入することができなかった。 2014年度の調査の前に選定を終え、物品を購入する。
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