平成28年度は、非正規従業員における勤続意志と雇用選択について、前年度までの研究を元に調査票を作成し、データを収集して分析を行なった。調査において、非正規従業員としてはパートタイムに限定して検討することにし、パートタイム労働者の職業別、性年齢別の分布に準じたサンプルをインターネットを用いたWeb調査により収集した。主として回帰分析を用いて検討した結果、まず勤続意志については仕事そのものの楽しさと、現在の職場で雇用の安定が期待できることが非常に大きな正の影響を持っていた。ただし、契約上の雇用期間が定めのないものか短期間のものであるのかの効果はなく、形の上で長期契約が勤続意志を高めるものではないことも明らかとなった。また仕事内容の満足や仕事の負担の軽さも一定の正の効果を持っていた。一方で、今回の調査モデルでは重視していた評価への満足や公正および均衡処遇の要因の直接の影響は見られず、仕事の楽しさを媒介しての間接的な効果にとどまった。給与への満足の効果も限定的なものであった。職種といったグループ別の効果も見られなかった。このことは、職場の人間関係や処遇、職種といった仕事そのもの以外の外発的要因は、直接には勤続意志に影響するものではなく、仕事の楽しさといった内発的要因の影響が大きいことが明らかとなった。次に、評価への満足については、評価の高さや公正さだけではなく、正社員と比べた処遇の満足や公正の影響が見られ、パートタイマーにおいては、評価そのものだけではなく正社員との処遇差による相対的剥奪がやはり重要であること、すなわち均衡処遇の重要性が確認された。このことから、パートタイム労働者の勤続意志の向上には、安心して働ける雇用関係の維持、仕事そのものの楽しさを高める施策が必要であり、評価や処遇面の均衡の導入にあたっては仕事への内発的な動機づけに影響する必要があることが明らかとなった。
|