研究課題/領域番号 |
25380522
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
齋藤 泰浩 桜美林大学, 経済・経営学系, 准教授 (50296224)
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研究分担者 |
高橋 意智郎 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (80407220)
竹之内 秀行 上智大学, 経済学部, 教授 (90297177)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海外子会社 / 日本企業 / 新興国 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、子会社進化に関する議論を、単一の焦点子会社から同一国内の他の子会社との関係、さらには他国の子会社との関係に焦点を当てながら再構築することにある。この目的を達成すべく、2014年度はデータベースを構築し、そのデータベースを用いた大規模サンプルによる多変量解析を行う計画であった。 データベースについては、日系自動車部品メーカーの在中国子会社データは充実してきたが、まだ完成していない。作業を進めていくにあたり、子会社の立地を省レベルで捉えるとともに、子会社の事業を製品(部品)レベルで把握するといった変更を加えた結果、作業に一層の精緻さが求められ時間がかかっている。前者(省レベルで捉える)は産業集積研究からヒントを得たものであり、年齢差、機能の差、あるいは能力差などだけでなく物理的な距離も考慮に入れることは企業内ネットワークを検討するうえで示唆に富む。後者(製品レベル)については、われわれが取り組んできたFDI行動と企業間相互依存関係に関する研究においてもFDIコミュニティ(Li,Yang&Yue,2007)を特定する(他社が競争相手なのか協調相手なのか等々)際に重要な変数なのである。 実証分析については、データベースが構築途中であるため次のプロセスに移行することはできなかったが、中国子会社データベースを用いて立地選択研究に取り組み、立地選択研究の多くが採用している条件付きロジットに挑んだ。なお、データベースの一部を用いた条件付きロジット分析による研究報告を7月に行う予定である。 前年度からの継続検討事項としての分析枠組みについては、Ambidexterityをキー概念の候補の1つと位置づけ、先行研究のレビューを重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れの原因の1つは所属研究機関が変わったことにある。新しい環境に慣れるのに予想以上に手間取り、本研究課題に割くエフォートが大幅に低下してしまい、その結果データベースの構築が遅れてしまった。研究分担者のおかげで在中国子会社データはかなり整備されたが、他国の子会社データが未整備のままである。 また、本研究課題の理論的枠組みとして考えてきた「内部競争」について再検討が必要になったことも遅れの原因の1つとして指摘できる。ある海外子会社の役割獲得(あるいは役割喪失)は他の海外子会社の役割喪失(あるいは役割獲得)が起きている可能性があることを意味するが(Birkinshaw,1996)、研究分担者として参加した研究課題(課題番号:23330134)で行ったアンケート調査の回答を用いて分析を試みたところ期待したような結果は出なかった。そのため海外赴任者との関連で考察を試みたりもした(成果については齋藤・竹之内,2015)。しかしながら、今日の日本企業の多くが先進国で経営を維持しながら新興国向けにもビジネスを展開するというジレンマに直面していることを踏まえ(浅川,2013)、Ambidexterityをキー概念の候補の1つと位置づけ、先行研究のレビューを重ねている。国際ビジネス文脈における Ambidexterity(Hsu,Lien&Chen,2012)が何かについて合意はまだなく、活用型FDI:特定の資産の国際移転と探索型FDI:海外で戦略的資産の開発あるいは獲得(Makino et al.,2002)について議論の余地があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は昨年度の遅れを取り戻すべく次の3つに取り組む。第1に、データベースを完成させる。第2に、そのデータベースを用いて実証研究を行う。第3に、データベースより洞察刺激ケースを抽出し、定性的な事例研究を行う。研究スケジュールは以下のとおりである。 平成27年4月~8月:データベースを仕上げる(齋藤・竹之内)。データベース構築作業には多くの時間と労力を要するため研究補助が必要である。 平成27年9月~11月:構築したデータベースを用いて実証研究を行う(竹之内・高橋・齋藤)ならびにAmbidexterityに関連して、日本企業のマクロ組織構造と国際ビジネスAmbidexterityについて学会発表を行う(齋藤)。 平成27年12月~28年1月:学会にエントリーする(齋藤・竹之内・高橋) 平成28年2月~3月:事例研究を行う(竹之内・齋藤)。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由はデータベース構築の遅れに伴い、実証研究に進むことができなかったためである。 その結果として「人件費・謝金」の予算が余ったことに加え、次年度の学会発表に向けて「旅費」の予算を充実させる目的で次年度に使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
日本企業の新興国における事業展開に関するデータベースを夏までに仕上げ、実証研究に着手する。研究協力者の雇用が不可欠なので「人件費・謝金」として使用するとともに、すでに確定した学会出張も含め、研究成果を積極的に発表すべく「旅費」として使用する計画である。
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