研究実績の概要 |
平成27年度は、前年度に引き続き日本の職場における相談の実施状況について、複数の企業を対象に調査を行い、組織的な相談活動のあり方を探索的に検討するとともに、オーガニゼーショナル・カウンセリングの実践度を測定する尺度を作成し、相談窓口の利用状況との関連について質問紙調査によって検証した。 【質的調査】調査対象企業は、組織における相談機能の多様な実態を捉えるため、独立した相談窓口を持たない企業から、企業内部に相談機能を有し、組織内の他システムとの連携が進んでいると考えられる企業まで幅広く選定し、計13社の人事責任者もしくは各制度の担当者にインタビュー調査を実施した。調査内容は、従業員支援(メンタルヘルスケアやキャリア形成支援)の現状と課題や従業員支援を行う体制、相談機能と他の人事制度との関係に焦点を当て、半構造化面接を実施した。分析方法は、オーガニゼーショナル・カウンセリングの段階(Pickard, 1997)に基づき、①相談の担い手の専門性(カウンセリングに関する専門性と当該組織に関する専門性)、②組織の戦略と相談活動との関連性、③関連する諸制度との統合度の3つの観点から分析を行い、活動を支える要因を検討した。分析の結果、組織において十分に相談体制が根付いていると考えられる企業の特徴を、前述の3つの視点が十分に示していることが確認された。 【量的調査】質的調査によって明らかにされた、相談体制の活用状況とオーガニゼーショナル・カウンセリングの実践度との関連を定量的に明らかにするため、質問紙調査を実施した。調査対象企業は、従業員数300名以上の企業1000社へ郵送で調査を依頼した。返送された調査票のうち、相談窓口を設けている企業・団体を対象に分析を実施した。活用度とオーガニゼーショナル・カウンセリングの実践度との関係について分析を行い、一定の関係が確認された。
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