今年度は、過去3年間に国内外で実施した日系多国籍企業に対する実態調査の結果得られた研究成果について論文を作成するとともに、それを海外の学会で発表することに重点を置いた。 これまでの研究で、日系多国籍企業の海外での新規事業・新製品開発のためのコラボレーションには、日本からの派遣社員や現地人材の起業家的活動が不可欠で、また、それには日本本社と海外子会社、およびその海外子会社と現地企業の関係の再検討も必要だということが明らかになった。すなわち、日本本社と海外子会社の埋め込み関係を弱くする一方、現地企業との埋め込み関係を強化することが、両者のコラボレーション活動を促進し、新規事業・新製品開発へとつながるのである。 このような活動は、日系多国籍企業では、現在のところ製造業の企業よりもサービス産業の企業により多くみられる傾向にある。このため、今年度は主にサービス産業の企業に焦点をあてた研究も行った。昨年8月にはタイとマレーシアに進出しているサービス企業4社に対し、現地調査を実施した。 なお、研究成果については、昨年6月にアメリカのニューオリンズで開催されたAssociation of Japanese Business Studiesの第28回年次大会で“The Explorative Activities and Dual Embeddedness in a Foreign Subsidiary: On a Case Study of Japanese General Trading Companies”というテーマで発表(共同)した。その後、この発表を論文としてリライトし、神奈川大学経済学会発行の『商経論叢』に掲載した。 この4年間の研究成果については、著書にして公表する予定で、現在その執筆中である。
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