研究課題/領域番号 |
25380532
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中西 穂高 帝京大学, 知的財産センター, 教授 (00567399)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | テレワーク / 生産性 / モデル / 経済効果 / 企業 / 経営 |
研究実績の概要 |
テレワークに経済効果を把握するために、コブダグラス型生産関数を踏まえた経済成長要因をもとに、テレワーク実施企業におけるテレワークの効果を把握した。具体的には、2015年度のテレワーク推進賞受賞企業9社がテレワーク導入効果としてあげている内容を、各社ごとに、テレワークの効果として総務省が指摘している12の要素に分解した。そのうえで、各要素について、経済成長要因である、労働投入、資本投入、労働生産性、資本生産性、全要素生産性への影響を分析した。 この結果、テレワークは、労働投入の増加を通じて、少子高齢化対策の推進、地域活性化の推進、有能・多様な人材の確保と生産性の向上に効果があることがわかった。具体的には、テレワークの導入により、子育て中の女性等98万人、介護者11万人の雇用機会を創出することが明らかになった。このほかにも、定性的にはテレワークが労働生産性、資本生産性、TFPを向上させる効果のあることも明らかになった。また、企業においてIT機器投資の増加が見られることから、総務省がテレワークの効果として想定していない資本投入の増加についても、期待されることが明らかになった。しかしながら、テレワークが労働時間に与える影響を定量的に把握することが困難であるため、生産性を定量的に把握することはできていない。 なお、これらの成果については、2016年7月に東京都千代田区で開催された日本テレワーク学会第18回研究発表大会及び同月に米国ネバダ州ラスベガス市で開催された、International Conference on e-Learning, e-Business, Enterpruise Information Systems, and e-Governmentにおいて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、テレワークの経済波及効果についての研究動向を把握するとともに、国内外の文献調査、事例調査、アンケート調査等の調査を行った。これにより、テレワークが経済に与える影響のメカニズムが明らかになった。また、経済効果のうち、エネルギー消費に与える影響、特に節電効果については、テレワーカーに対するアンケート調査を実施することでエネルギー消費機器の利用形態やオフィス及びテレワーク場所(自宅)の使用状況を把握し、これをもとに「テレワークエネルギー消費モデル」を作成した。このモデルをもとに、テレワークが節電につながるための条件を明らかにした。 28年度は、労働投入、労働生産性、TFP等の経済成長に関わる要因について、テレワークの総合的な経済効果を検証することとしていたが、予定通り、テレワーク推進賞受賞企業のデータを用いて、テレワークを導入した企業の実績を踏まえたテレワークの導入効果モデルを構築した。これにより、企業がテレワークを進めたときにもたらされる経済効果を分析する方法を確立することができた。ただし、テレワーカーの働き方と労働時間との関係が解明できていないため、労働生産性の定量的な推計については今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
テレワークが労働生産性に与える影響について把握するためには、テレワークという働き方が労働時間に与える影響について考察する必要がある。そのために、テレワークと労働時間の関係について、テレワーカーの特性(ワーク・ライフ・バランスへの志向性、ワーカーの技術力)、労働条件(労働時間に対する制約や規制、成果物に対する品質スペック等)を踏まえた理論的なモデルを構築する。また、テレワークを導入した企業がテレワーカーをどのように活用しているか、テレワーカーの実際の働き方はどのようなものか、クラウドソーシングを活用することで、フリーランサーをどのように活用しているか、といったテレワーク実施に関するデータをもとにそのモデルの検証を行う。これらの研究成果を踏まえて、テレワークが経済に与える総合的な影響について考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
企業が実施するテレワークが、企業の生産性に及ぼす波及効果を検討した結果、生産性を把握するためには、テレワーカーの働き方の詳細(労働時間、働く時間帯、報酬等)およびテレワーカーのワークライフバランスに対する志向性に関するデータを入手する必要性が明らかになった。研究目的を達成するためには、企業アンケート等を実施して、これらのデータを得ることが必要であるため、次年度に経費を使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
企業におけるテレワークの利用と生産性の向上の関係に関し、これまで明らかになっていない労働時間の観点からの調査を行う。その成果を利用して、テレワークの企業生産性への影響を把握する。 また、本研究の最終年度として研究成果報告書を作成するとともに、出版、学会におけるセミナーの実施等、研究成果を社会に伝えていくためのアウトリーチ活動のために経費を使用する。
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