研究課題
基盤研究(C)
25年度は、第一の目的「イノベーション・プロセスの段階の推移、すなわち流動期、成長期から成熟期に至る段階において、どのような戦略が有効であったかという点について定量的に分析する」作業に充てた。申請者は、これまでの研究において、『有価証券報告書』『IR資料(決算説明会資料等)』『業界専門誌(日経マネー)』『情報会社提供資料((株)ストックリサーチ)』等を通じて、「手数料(50万円、100万円、300万円、1千万円)」「信用取引の取扱開始日」「夜間取引」といった19の項目につき、オンライン証券会社の各社の戦略を記述するデータベースとして独自に整備を行ってきた。しかしながら、競争が激化するにつれて、企業ごとに独自の手数料料金体系を開発したり、取扱商品(投資信託、外国株式など)を増やしたりして、これまでの項目だけでは正確な比較が出来ない状況になっていた。また、業界の黎明期にあたる2005年までのデータは整備しているものの、それ以降の成長期・成熟期については整備が必要であり、この作業を進めた。このようにしてデータ整備と仮説構築を行ったのちに、多変量解析を行うこととなる。具体的な手法としては、生存時間分析ならびに、ロジスティック回帰分析などを予定しており、当該年度では予備的な分析を行うことが出来た。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度、当初に予定した計画通り、研究が遂行できているとおおむね判断されるため。
26年度は、引き続き第二の目的「イノベーションの各段階で有効であった戦略は、いかに企業間競争に影響を与えたかという点について、『証券会社間の入出庫』という顧客移動に関するパフォーマンスデータ用いて、定量的・経時的に分析する」作業を行う。ここでは、オンライン証券有力企業の「入出庫データ」を入手・分析する。このデータは、既述のとおり基本的には内部データであるものの、(株)きんざいの協力のもと2002年~2008年のデータについては共同で分析を行ってきた。有力オンライン証券会社は業界研究の一環で(株)きんざいに定期的にこれらのデータを供与するとともに購入しているが、今回は研究目的の使用として、証券会社以外の個人として初めて購入を許可される予定である。これらのデータを単純集計するとともに、顧客の企業間の移動をネットワーク分析にて可視化したソシオグラムとして描写することを試みる。これにより、オンライン証券会社間だけでなく、大手既存証券会社や中堅証券会社を含めた、業界内の顧客の動きを包括的に、重みやベクトルを伴った形で描写できる。この結果を、前年度に行ったイノベーション・プロセスの進展と戦略の研究結果と対応させることで、企業間競争の様相について極めて興味深い分析が期待できる。分析には、フリーのネットワーク分析ソフトPajekを用いる予定である。26年度には、第一の目的・第二の目的について、ともに中間的な成果を論文あるいはディスカッション・ペーパーの形で出すことを予定する。
平成25年度においては、収集データのうち一部が未収集のなかで予備的な分析を行ったため。平成25年度に入手予定であったデータにつき、平成26年度入手分と併せて入手し、データ整備の完成度を高める計画である。したがって、平成25年度の繰り越し分については、平成26年度に使用する予定である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
科研費NEWS
巻: vol.1 ページ: 5-5
Transactions of the Academic Association for Organizational Science
巻: vol.2, No.1 ページ: 44-49
2013年度組織学会研究発表大会 報告資料
巻: 春期大会 ページ: 50-53