本研究では①中堅・中小製造業企業における女性人材の育成・活用の課題は何か、②その課題は職場のタイプごとにどのように違うのか、③その課題は企業規模によってどのように違うのか、④中堅・中規模企業において女性活躍を伴いながら、経営効率を高め、新しい価値の創造を実現できる組織変革を成功させていくための条件は何かを検討した。 ①については、関連する既存研究の整理により、第1にWLB側面からは制度の充実を進める大企業と、個別事例に柔軟に対応する小企業との挾間で中企業の従業員満足度がU字型で低下する傾向になること、第2にWLB支援と男女均等推進の両輪で変革を進め企業業績を高める効果の実現が、大企業に比べ中小企業ではよりハードルが高いことが実証研究から推測されることを示した。 ②については、職場のタイプを3つに分け、富山県で実施した独自のインタビュー調査(中堅・中小の地場企業25社における女性従業員80名及び経営者等33名への半構造的インタビュー)の結果を分析した。「研究開発型職場」では従来、WLB支援で課題が大きく、「ものづくりの現場型職場」と「事務的職場」では逆に男女不均等の課題があったこと等が示された。 ③については、上記インタビュー調査結果を「21~50人」「51~100人」「101~300人」「301~999人」に分けて分析した。WLB支援に関係する「柔軟な働き方への満足度」の面だけでなく、男女均等推進に関係する「女性の職域拡大」「女性の役職登用」の面でも、「101~300人規模」の達成度合いが、「21~50人」「51~100人」よりもまた「301~999人」よりも低くなるU字型となる仮説が提示された。 ④については、50人の規模を超えると中小企業であっても、中間管理職を巻き込み組織文化の変革と日常業務活動のパターン変革を進める組織論的な対応が重要になること等が示された。
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