1.研究成果の具体的内容 日本の映像コンテンツ産業の有料放送チャンネル(有料テレビ放送およびネット放送)の1年分1万世帯の視聴履歴を分析し、ヒアリングとクラスタ分析(ジョイントセグメンテーション分析)することによって以下の結果を得た。①世帯視聴は、ヒット番組(有名映画、有名ドラマ、有名スポーツ選手の番組)だけを視聴する世帯と、嗜好的な番組(スポーツ、ドラマ等)を視聴する世帯という特性によってセグメンテーションできた。つまり、既存のジャンル(ニュース、映画、スポーツ、ドラマ等)ではなく、ヒット番組と嗜好的番組という2つが、視聴動向によるセグメンテーションの2軸となるのである。②ネット視聴について、世帯内で共通視聴されやすい番組は、嗜好的な番組(スポーツやドラマ等)である。また、同性の兄弟、姉妹、親子、夫婦の共通番組視聴が多いことが把握できた。これらから、世帯内のコミュニケーションにより共通的なネットでの番組視聴が誘発されているとの考察を得た。 2.研究成果の意義および重要性 従来のテレビの視聴調査はサンプリング調査であったが、1万世帯の1年分の膨大な視聴ログを分析する手法により、視聴動向が特徴的に捉えられた既存の番組ジャンルではなく、その番組ヒット度合いと世帯内でのコミュニケーションが起きやすい嗜好度合いでの視聴者分類が重要であることは、放送作品の制作と流通のための視聴行動のマーケティングの重要な示唆に至っている。つまり、お茶の間で家族視聴する番組提供、共通嗜好を狙った番組提供などで視聴者をセグメントし、番組制作やネット流通、CM提供などを計画することができる。 3.今後の計画 2016年「日本マーケティング・サイエンス学会研究大会」での発表後、論文化して学会投稿しているが、査読等に時間がかかり受理されていないため、現在は投稿先を変更して査読論文としての、本年度掲載を計画している。
|