本研究の目的は、東南アジアの地場企業が如何にイノベーションを創出しているのかを実証的に明らかにすることである。イノベーション創出のため企業は、人材養成や改善活動、研究開発活動を通じ、自社の人材や技術といった内部リソースの質を高め、Internal Capabilityを構築、向上していく必要がある。それに加えて、取引先企業や大学といった外部リソースと自社の内部リソースとを結びつけることで、企業はInternal Capabilityを形成し高めることができる。外部リソースの活用は、技術力が低い地場企業にとって特に重要である。本研究は、以上の問題意識に基づき、外部リソース、内部リソース、イノベーション能力がイノベーション発生確率にどう影響しているかをモデル化し、分析を加える。
平成27年度は、東南アジア4カ国(インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の製造企業に対するアンケート調査やタイの運輸企業に対するアンケート調査から構築したデータベースを用いて、①多変量解析等を用いた企業のイノベーション能力の計測と、能力指標とイノベーションとの関係の分析、②外部リンケージの形成要因として、改善活動といった企業内部での活動と顧客の品質改善要求といった外圧に着目した分析、③イノベーション実現要因として、従業員個々の能力と意識付けとグループ活動を通じた企業レベルの能力構築活動に着目した分析などを行った。分析に際しては、回帰分析、SEM(構造方程式モデリング)などの手法を用いた。さらに、産学連携に関する実証分析の参考とするため、札幌における産学連携の現状について現地調査を行った。
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