本研究は医療事業で重視されるサービス品質と顧客満足の関連構造の解明を目的とする。同品質は本質的サービスと表層的サービスに分類され、患者満足度の成果指標に如何に影響するかを考察した。医療分野において同2品質と成果指標の関連性に関する実証研究はなく、嶋口・狩野モデルの実証的検証として意義のある研究と言える。分析の結果、外来における本質的高品質と表層的品質を厚生省研究会での分類を元に区別し、それらが成果変数に如何に影響するかを偏回帰係数(成果変数に影響する度合い)の数値を元に解析した。対象となる医療機関が調査期間(5年間)のうち、施設の改築があり明らかに表層的品質が向上した。本質的成果変数は安定し、一定の水準を保った形となっていることが判明した。以上により嶋口・狩野モデルの存在の可能性が高まったことが判明した。ただ、モデルの論証にはより多くの調査対象となる医療機関の参加が必要である点が判明した。本研究では傍証として入院患者のデータを元にした「スクリプト」「ノルム」「衡平性」の概念と患者満足指標との関係を共分散構造分析を行い、有為なモデルを抽出した。3指標が全て正の関連を示すことが判明し、医師看護師の患者への対応において常に平等に対応すべきであり(衡平性)、患者の積極的な医療診療への参加が満足をうみ(スクリプト)、医療機関の位置付けの明確化(ノルム)が患者満足度を向上させる結果となることが判明した。
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