研究課題/領域番号 |
25380568
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
林 克彦 流通経済大学, 流通情報学部, 教授 (20258164)
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研究分担者 |
根本 敏則 一橋大学, 商学研究科, 教授 (90156167)
石原 伸志 東海大学, 海洋学部, 教授 (30433907)
橋本 雅隆 目白大学, 経営学部, 教授 (30218424)
齊藤 実 神奈川大学, 経済学部, 教授 (60409844)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自動車部品 / 調達ロジスティクス / アジア物流 / RORO船 / シームレス物流 / 共通物流政策 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の自動車産業のアジア域内水平分業体制における部品調達物流の実態を把握したうえで、ロジスティクス革新の実態、国際物流システムの課題、国際物流政策の課題等を明らかにすることを目的としている。 平成26年度は、25年度に引き続き①自動車製造業者の物流、②アジア域内における国際物流、③日韓シームレス物流等の実態と課題について、文献調査、企業のインタビュー調査等を実施した。国内での文献調査を踏まえ、韓国釜山においてシャーシ相互運行を行っている物流事業者や倉庫・物流センターの運営事業者にインタビュー調査を行った。さらにタイプラスワンの進出先といて注目を集めているカンボジア・プノンペンとミャンマー・ヤンゴンにて、製造業者や物流業者等にインタビュー調査を行った。 その結果、以下のような点を把握することができた。①最近の円安傾向のもとで海外部品の優位性が低下し国内部品調達が増加しているものの、自動車組立企業や部品製造業者の集中生産体制や国際水平分業体制のもとで、なおも海外部品の調達物流が重要な課題となっている。②アジア域内の水平分業体制はタイプラスワンの立地も含めて高度化・複雑化が進みロジスティクス体制整備が重要な課題となっている。③日韓シャーシ相互運行は、韓国と日本の自動車分業体制に不可欠な物流手段となっているものの、ダブルナンバーの取得や特例認可等の様々な障壁が残されている。④荷主企業や物流事業者はアジア域内の国際水平分業を効率化するシームレス物流体制を構築しようとしているが、規制・制度の調和やアジア共通物流政策の推進等で政府の役割がより重要となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、円安基調の定着、韓国の政治情勢の変化等、当初計画で想定していなかった要因変化が続いたため、日韓自動車部品物流を中心としながらも、研究対象をアジア全域に拡大し、アジア域内の自動車ロジスティクス体制に研究対象を広げた。 日韓シームレス物流については、韓国釜山の物流事業者に対するインタビュー調査を実施することができ、事業環境の変化にもかかわらず、シャーシの相互運行が関係者の努力によって定着したことを確認できた。シームレス物流は、アジア地域内の水平分業体制を支える上で、他の地域でも重要な課題となっており、この物流モデルがアジア全域に横展開することが今後の重要課題となっている。また韓国釜山新港は、東アジアのハブとして物流に重点投資を続けており、韓国だけでなく日本の企業もこのインフラ整備を活用したロジスティクス整備を進めていることが理解できた。 カンボジアとミャンマーでのインタビュー調査では、進出日系企業が低労働コストを活用した生産拠点立地が進められる一方、周辺国や日本、中国、韓国へ製品を輸出する際のロジスティクスが重要な課題となっていることが確認できた。ASEANの国境障壁の低減や国際物流インフラの整備が進められており、これらを活用したロジスティクス効率化が課題となっていることが理解された。 政策面では、北東アジアのみならず東南アジアを一体としたアジアの水平分業体制や貿易体制づくりとそれを支える物流体制づくりが課題となっている。 これまでの研究で、以上のようなことが明らかとなり、そのうちのいくつかの論点について論文等として発表することができた。このことからおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、本研究のテーマである日韓自動車部品ロジスティクスを中心とし、水平分業が広がるアジア地域にも目を向けて、研究を展開していく予定である。このことにより、より幅広い視点から自動車部品ロジスティクスの研究が行われ、より充実した政策インプリケーションが得られると期待される。 日韓自動車部品ロジスティクスについては、これまで実施した文献調査や統計分析、インタビュー調査を論文として取りまとめる。また中国、カンボジア、ミャンマーの日系進出企業を対象にした研究を深耕するとともに、比較分析や他の地域の調査研究等も検討する。日韓を中心にアジアに広がる自動車部品ロジスティクスについて、より体系的な分析を行ったうえで、政策インプリケーション等についても検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
韓国釜山での実態調査が諸事情により3月に遅れたため、当該年度に関連する諸経費を使用することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
韓国釜山での実態調査をまとめた論文作成時に文献等を購入したり、追加実態調査の旅費として使用する計画である。
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