昨年度からの継続で、ビジネス・ネットワークにおける「正当化」(legitimation)の問題に焦点を当てた研究を行った。この研究成果は、過去に海外の学術雑誌に投稿してレビュアーから指摘を受けて修正してきた共著論文に部分的に活かされ、本年度、本論文は当該雑誌に掲載された。これは、ビジネス・ネットワークの周辺的なアクターである政府などの行動が、イノベーション・ネットワークを構成する企業の活動や資源などのコーディネーションを意味するネットワーク・オーケストレーション (network orchestration)に与えるインパクトについてまとめた論文であり、具体的には、2000年前後に展開された東京都によるディーゼル・エンジンに対するネガティブ・キャンペーンが自動車産業のビジネス・ネットワークに与えた影響について、テキスト・データを用いて定性的な分析を行っている。 また、定量的な実証研究も行っている。これは、取引費用理論や学習理論などを基礎として、理論モデルを構築し、製造業者からのサーベイ・データを用いて行った研究である。製造業者と流通業者の企業間関係という文脈において、流通チャネルにおける関係特殊的投資、流通活動のカスタマイズ化、不確実性などの関係性属性、製造業者の活用能力 (exploitation capacities)などのケイパビリティ属性、 チャネル統合度などの制度属性、そしてチャネル・パフォーマンス(チャネルにおける価値創造)の間における関係について分析している。この研究の成果は、共著でコンファレンス・ペーパーにまとめて、インダストリアル・マーケティングに関する国際学会に投稿した。
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