研究課題/領域番号 |
25380594
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中村 博之 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (20217889)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | アジア子会社 / 多国籍企業 / ネットワーク経営 / コントロール・システム / グローバル経営 / 国際管理会計 / 連結経営 / 国際人事管理 |
研究実績の概要 |
本研究では、製造業を中心に、世界の工場とも言えるアジア地区に集積する日本の多国籍企業の経営管理システムを課題としている。アジア地区の日本企業は、日本に本社を置く各社の子会社形態をとることが多い。しかも、これら子会社は、中国が典型的な立地国であるものの、それ以外の国へも急速な移転を見せている。このため、子会社企業は網の目のように連携することとなり、これは、研究課題名の通り、アジアを中心とするネットワーク化での企業経営となっており、このタイプの経営の巧拙が企業の最終業績に多大なる影響を及ぼすことが明らかとなっている。このような状況で、日本企業が、経営コントロールのため、どのような管理会計システムで、この複雑なネットワークを管理しているかを解明するのが研究の中心である。 本年度は、研究年度の2年目に当たり、第1年度で構築した理論的基礎に基づいて、企業実務の本質を訪問調査することを目指した。ここでコントロール・システムについては、バランス・スコアカードからも理解できるように、財務と非財務の両者が重要である。そのため、本年度、予算を代表とする財務コントロール、さらには人事を代表とする非財務手法によるコントロールの両面を検討することとした。海外訪問調査は、経済情勢の影響などから受け入れ企業探索困難にて今年度実施を見送った。ただし、過去のアジア地区の子会社インタビュー調査や日本でのインタビューにより、非財務的なコントロールとしての、子会社への管理職配置の現状を明らかにした。これについては、国際共同研究を行っているフランスの大学所属の研究者とともに共著論文として出版できた。引き続き、財務的なコントロールについて、社外秘事項も多いが、管理会計システムとして最重要であることから、協力が得られる海外子会社を訪問し研究成果とする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は交付申請の研究目的に基づいた研究進捗を目指している。この3年間の研究期間中に、本研究は理論研究と企業を対象とする実務調査からなるものとしている。ここで、第2年度は、第1年度の理論研究の成果を基盤として、実務に目を向けた研究に移行することとした。この第2年度について、関連企業の協力あれば、海外実務調査を目指したが、困難に直面した。そこで、これを以前のアジアの企業インタビュー調査資料、さらには日本企業本社調査などの形で補うことで、本研究が目指す日本企業の管理会計システムの実像の重要部分を描き出すことができた。このことから、上記の評価が相当すると判断した。最終年度には、引き続き実務調査を実施し、この全容を明らかにすることとしたい。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、第1年度に理論研究を中心とした企業実務調査の基礎構築、第2年度は、アジア地区子会社企業の実務状況の明確化を目指している。この2年間で当初予定の通り、アジア企業のネットワークの実態を把握できた。最終年度は、交付申請によるように、最終成果提示の年として、ネットワークに基づく子会社管理会計の全貌を明らかにする。これをより説得力あるものとするために、社内秘的なことから困難多いものの、関係各位の協力を得て、アジア地区子会社を訪問してインタビュー調査したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の第2年度にあたる今年度は、アジア地区の各国に所在する日本企業子会社を訪問する予定であった。ここでは、コントロール・システムとしての管理会計システムの実践についてインタビューし、その本質を探究する予定であった。しかしながら、アジアの経済情勢や政情などの外的な要因から、今年度は最終的にインタビュー対象となる日本企業子会社を抽出することができなかった。このため、年度末まで調整を試みたが、実務調査を行うための海外調査旅費を使用できないこととなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度、アジアの日本企業子会社インタビュー調査は実現できなかったものの、年度末まで、継続的に関係各社と交渉を試みた結果、インタビュー調査に好意的な企業も散見されるところに至った。また、アジア各国の提携先大学に相談の結果、現地窓口としての研究協力を得られる見込みが出てきた。加えて、政府の外交努力の結果、アジアでの信頼回復が顕著に見られるようになった。このような状況好転から、今年度はアジア地区の日本企業子会社訪問は十分可能であると判断でき、インタビュー調査実施により、本来予定した調査旅費として使用することとしたい。
|