研究課題名「アジア・ネットワーク経営のための子会社管理会計システムの研究」とあるように、本研究では、アジア地域内において、網の目のごとく張り巡らされた日本企業子会社の管理会計システムに関する研究である。そして、この研究では、国際経営や管理会計などの理論研究を基盤としながら、日本企業に関する実務調査により、その実態を把握することで、過去の実態を明らかにし、今後の企業発展のための管理会計モデルを提示することである。 理論研究に関しては、日本企業のアジア地区への経営展開が一段と加速する状況から、これをどのように組織、管理するかについて研究を行った。この組織と管理の問題については、本社と子会社とのマネジメント・コントロールとして検討することが、経営学及び管理会計の両面から重要であることが明らかとなった。このマネジメント・コントロールでは、これを広義にとらえ、管理会計のみならず、人的コントロールなども含めた広範なコントロール・システムとして、それを認識することの必要性が明らかになった。よって、本研究では、人事管理的な側面にも踏み込み、どのような業務と職位の人間を本社から派遣し、それをどのような会計的な尺度で評価するかを検討した。 このような理論研究を基盤として、過去に行ったアジアに所在する企業訪問調査結果について、日本企業のコントロール実務に関する分析を行った。そこでは、従来のマネジメント・コントロールが、より階層的になり、コントロールのメカニズムが複雑になることから、アジアに展開するグローバル企業の困難な状況が明らかになった。そのような複雑なネットワークをコントロールするために、地域統括会社の利用が1つの大きな意味を持つこととなる。本研究により、本社による、地域統括会社、現地子会社という上位と下位の多層的ネットワーク関係のコントロール・システムを明らかにすることができた。
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