本年度は、日本企業のコストマネジメント行動を明らかにすることを目的として、次の点を明らかにした。 第1に、コストマネジメント行動に関する概念モデルを構築した。当該概念モデルにおいて、コストマネジメント行動は、(1)価値提案を対象とするコストマネジメント行動、(2)価値連鎖を対象とするコストマネジメント行動、(3)活動水準を対象とするコストマネジメント行動という3つのタイプに分類できることを示した。 第2に、物流コストに関するコストマネジメント行動とコストの関連を分析することによって、異なるコストマネジメント行動が、コストに対して、相互依存的に影響を及ぼすことを明らかにした。また、コストマネジメント行動とコストビヘイビアの関係について分析を行った結果、売上高の増加時と減少時で、企業が異なるコストマネジメント行動を選択することや同様のコストマネジメント行動であっても、売上高の増加時と減少時でコスト構造の弾力性に対して異なる影響を及ぼすことが明らかになった。 第3に、コストマネジメント行動に関するサーベイ調査を実施し、日本企業のコストマネジメント行動の実態を明らかにすることを試みた。本研究では、リスクマネジメントがコストマネジメントと相互依存的な関係にあるとの認識から、サプライチェーンマネジメントのリスクマネジメントとコストマネジメント行動の関係に注目した。調査の結果、多くの日本企業がコストマネジメントに対して積極的な行動を行う一方で、リスクマネジメントへの取り組みに遅れがみられることが明らかになった。 第4に、財務リスクとコストビヘイビアの関係について、理論的・実証的に検証を行った。本研究では、財務リスクが資本コストの上昇や財務的制約を課すことによって、コストビヘイビアに影響を及ぼすことを明らかにした。
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