研究実績の概要 |
平成26年度においては、まず「現在、求められる財務報告とは何か」ということを改めて考察した。会計ビッグバン、コンバージェンス、四半期報告や定性情報の拡充などが企業の会計行動に及ぼす影響を検討した。その結果、今日においては、中長期的な視点に立った情報や必ずしもひな形にとらわれない経営者の視点を活かした定性情報の充実が財務報告に求められていると指摘した。中長期的な視点に立った企業情報の代表に中期経営計画情報があるが、当該情報の研究に関する経緯を跡付け、特に財務会計に関する研究を、開示実態、開示企業の特徴の2つの観点から整理した。 中期経営計画の開示実態としては、プロネクサス社提供のデータベース「eol」を用いて、2001年度から2013年度において「中期経営」をキーワードにTDNETにアップロードされた「その他適時開示書類」を検索したところ、2001年度は224文書の抽出にとどまったものの、その後2008年度(1,682文書)まで一貫して増加し続けていた。2009年度は1,242文書と大きく落ち込んだが、その後再び増加に転じ、2013年度には1,689文書が抽出された。企業の開示書類において中期経営計画に言及したり、中期経営計画に関連付けて公表される傾向が高まっていることを明らかにした。 開示企業の特徴としては、非開示企業に比べて企業規模が大きく、負債比率が高いこと、また外国人持株比率と社外取締役比率が高いという特徴がみられた。 さらに、有価証券報告書の開示及び記載事項のあり方について検討を行った。現行の有価証券報告書は、①開示項目は国外の制度と比較して見劣りしない、②各記載項目が孤立的に記載され、他の項目との関連性を理解し難い、③タイムリーネスの点で他の開示制度に劣る、という特徴を明らかにした。そのうえで、有価証券報告書の可能性を提示した。
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