本研究は、EUにおける国際財務報告基準(IFRS)のアドプション後の制度内調整に伴う諸問題を、中小企業版IFRSへの対応(中小企業版IFRSとEU会社法指令・ドイツ商法典のアドプション)、ならびに国際監査基準(ISA)への対応(EUへのISAのアドプション)を対象として分析するものであり、本研究の意義・重要性は日本へのIFRSの強制適用に伴う政策的インプリケーションを得るという点にある。分析の結果、企業に複数の会計基準・会計処理方法の選択権を与えるという措置を制度に組み込み、各企業がそれぞれの企業環境に応じて弾力的に対応できるようにすることが、IFRS適用への適応に際しても有効であるということが明らかになった。 3年目にあたる平成27年度には、ISAのEU域内へのアドプションに伴うコンフリクトを取り扱ったが、そこではとりわけIFRSのEUおよびドイツへの適用に伴うコンフリクトとの異同に焦点をあてて研究を行った。前年度から続く研究の成果としては、次のものを公表した。「IFRS適用の影響に関する海外調査報告 ドイツ―会計監査人の見方」『企業会計』第67巻第6号、102-105頁、「EU・ドイツにおける国際財務報告基準導入の影響」『九州EU研究会ニュースレター』第29号、3頁。また、次の学会報告を行い、論文を作成し、ジャーナルに投稿した。「欧州資本市場におけるlocal GAAPの適用-ドイツの事例を中心として-」国際会計研究学会第32回研究学会(於専修大学)平成27年10月4日。さらに、本年度の研究内容を含む論文を現在執筆中であり、平成28年度中に数本の論文を公表する予定である。
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