研究課題/領域番号 |
25380614
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉田 栄介 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (20330227)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テンション・マネジメント / 郵送質問票調査 / フィールド調査 / 原価企画 / 目標原価 / コンカレントエンジニアリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,管理会計の新機能として,テンション・マネジメント(「張り」のマネジメント)に注目した管理会計システムの設計と運用に関する知見を深めることにあった。そのために,第1に, 個別の管理会計手法や情報を対象にその機能・役割を探究するためのフィールド調査を実施し,第2に,「業務目標設定」と「コントロール・モード」に焦点を当て,組織成果への影響について実証的に解明するための郵送質問票調査データに基づく統計的解析を計画していた。 平成26年度の研究も実施計画通りに推移した。 第1の研究アプローチであるフィールド調査については、おおよそ30社程の国内企業と在米企業2社を対象に実施した。企業を取り巻く競争環境や事業特性の影響を検討するため,多様な業種に属する多くの企業から情報を得ることを意図した。これほどの規模の半構造化インタビューは貴重であり,インタビュー情報から一定の特徴的な傾向も見出しており,調査そのものの学術的意義は高い。平成27年度にはこれらの企業から対象,内容ともに絞り込んだ追加的調査を実施する予定である。 第2の研究アプローチである統計的解析については、平成25年度後半に実施した郵送質問票調査(東証一部上場企業1,752社(製造業847社,非製造業905社;2013年10月末時点)を対象,有効回答会社数は製造業130社(有効回答率15.3%),非製造業117社(同12.9%))によって収集したデータを用いて解析を進めた。その結果,プロセス型製造業の製品開発段階における「挑戦的な目標設定」と「コンカレントエンジニアリング」の原価低減に対する相乗効果を実証的に示唆する結果を得た。これらの2つの要素の相乗効果に注目した研究は稀であり,さらに実証的研究に踏み込んでおり,学術的意義は高いと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,第1の研究目的のためのフィールド調査に加えて,第2の研究目的のための郵送質問票調査データに基づく仮説検証を中心に実施する計画であった。フィールド調査については,当初の計画よりもむしろ多くの企業へ訪問したため,十分なアイデアと情報を入手することができた。仮説検証型の実証研究については,計画通りのスケジュールで分析は進行したが,十分に仮説を支持する結果が得られたとは言い切れない。そのため,当初予定していた経理部門長対象の郵送質問票調査とは別に,経営企画部門長対象の郵送質問票調査(平成26年11月実施)の機会を得たため,当該研究に関する質問を設定し,追加的データ・情報の収集に努めた。 これらの研究成果の中間報告として,論文1本(6回の連載),国内学会発表1回の形で公表し,平成27年度には,論文1本(掲載決定),海外学会報告2回(審査中)を予定しており,これらの情報発信活動も当初の計画通りである。 以上を総合すると,研究の進捗としては順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに研究が進捗しており,追加的郵送質問票調査により実証研究のためのデータも豊富になり,フィールド調査についても既に平成27年度の4月から6月に訪問する企業数社との日程も確定している。 そのため,今後も計画通り,海外学会での情報収集・意見交換を踏まえて論文を仕上げていき,随時,情報発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度末(3月)に計画していた企業訪問調査のために予算を残しておいたが,直前まで日程が確定せず執行しなかったため,予算が未消化となった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の事由による繰り越しのため,平成27年度前半に実施する国内旅費(起業訪問調査)に使用する計画である。
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