研究課題/領域番号 |
25380615
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
小酒井 正和 玉川大学, 工学部, 准教授 (50337870)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 管理会計 / 業績評価 / 組織文化 / グローバリゼーション / IT経営 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、IT組織が戦略志向へ変革するために必要となる業績評価システムのあり方について探究し、グローバル企業におけるベストプラクティスを提案することにある。平成26年度は文献調査と訪問調査を進めた。これにより理論と実務とのギャップ分析ができ、近年のITの発展によるIT経営の変化について知見を広げることもできた。その結果、ケーススタディの基礎作りが整い、理論モデルの精緻化、実証研究のための仮説導出、これまでの研究成果の妥当性検討ができた。 第1に、文献研究の成果として情報資本に関連する理論モデルの精緻化を図れた。この成果として「企業価値創造に向けてのインタンジブルズの複合的活用」、「インタンジブルズとしての情報資本の意義と複合的活用に関わる理論研究」という学会報告を行うことができた。 第2に、文献調査と訪問調査の成果として業績評価システムに関連したインタンジブルズ(無形の資産)のマネジメントに関わる仮説を導出することができた。この成果として「Management of Information Capital for Knowledge Creation: Integrated utilization information capital, human capital, organizational capital, and customer relationship capital」という研究論文としてまとめることができた。 第3に、企業への訪問調査や企業のIT経営推進者との連携によって、これまでの研究成果の妥当性を再検討することができた。この成果として、「IT部門を変える3つのトリガー~人財、組織、経営システムに関する変革の方向性~」などの講演の機会を得て、日本の企業経営に対して本研究の成果を還元するとともに、本研究における理論モデルをさらに精緻化することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的として、グローバル企業のベストプラクティスを提案することがある。本年度は大企業、中堅企業、中小企業に対して業績評価、人材育成についての訪問調査を行い、積極的に情報システム関連の人材との交流に重点を置いた。これによってケーススタディに関わる情報収集ができたといえる。 今年度も海外企業へのアクセスと情報交換の機会をつくることに苦労があったが、国内の金融機関、流通・小売業のグループ企業、情報システム関連会社に調査する機会を得ることができたことが幸いであった。これにより、人材育成や組織開発の現状、経営計画に関連した業績評価に関する知見を得ることができた。それにより、情報資本などのインタンジブルズ(無形の資産)の複合的な活用の視点を加えた理論モデルとして再構築し、本研究に取り込むことができた。 これらの成果として、原著論文として直接的な本研究の成果が1件の英語論文として採択されたことが本年度の主要な研究成果としてあげることができる。他にも、国内外の学会での報告、講演も複数報告をすることができた。このように本年度の研究実施計画は順調に実施することができた。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は順調に研究成果をまとめることができた。平成27年度も研究実施計画にしたがい、最終年度の成果としてケーススタディもしくは統計的な手法などを用いた研究成果をまとめて行く予定である。これまで地道に訪問調査をしてきて、調査できた企業から得られた知見を総覧すると、ケーススタディではなく、視点を広げて統計的な手法による実証分析を行うこともできると考えている。 他方で、この1、2年で国内外の企業ではITを活用した経営やビジネスが大きく様変わりしようとしている。たとえばIoT/IoE(Internet of Things/ Internet of Everything)、Industry 4.0, Analytics 3.0などといった新しい概念が一般的となってきており、それに対応してIT組織の組織構成が入れ替えられたり、実験的な施策を行う企業も増えてきている。今後の研究の推進にあたり、このような経営環境の変化がネックとなるリスクがあるとも考えている。このような経営環境の変化、IT経営への取り組みの増加、経済情勢などの諸要因に対応した研究を行う必要性がある。そのためには、最新のIT経営事情も研究領域にある程度含めなければならないと考えている。そのうえで、本研究におけるリサーチモデルを設定し、実証的な分析を進めることとする。なお、平成27年度も引きつづき、国内外での学会報告および論文の発表を行う予定である。
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