「利益操作」および「会計基準の厳格化」が投資家便益に及ぼす影響を、経済モデルで分析した。会計には、ある期に報告利益を操作すると、他の期にその反転が必然的に生起するという重要な特質がある。そこで、こうした特質を反映する多期間モデルを考えた。さらに、利益操作の手段を会計的裁量と実体的裁量に区別すると、会計基準の厳格化は会計的裁量だけに影響を及ぼすため、経営者は利益操作に際して実体的裁量を選択するようになることを明らかにした。その結果、会計基準の厳格化はその意図に反して、投資家便益を高めるというよりはむしろ低下させる可能性がある。
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