研究課題/領域番号 |
25380618
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
丸山 佳久 中央大学, 経済学部, 准教授 (10342312)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メソ会計 / メソ環境会計 / バイオマス会計 / 地域的サプライチェーン / 産業クラスター / 環境会計 / 森林会計 |
研究実績の概要 |
2014年度は、次の3点について調査を実施した。まずひとつ目は、2013年度に試案として取りまとめたメソ環境会計の構築手順に基づいて、部分的な実証化を行なった。具体的には、2013年度に収集したデータに基づき、岩手県紫波町における木質系バイオマスの燃料化(ペレット製造)とペレットボイラーでの熱利用を中心に、地域内のプロセスの連鎖関係や関連データをメソ環境会計として整理した。 ふたつ目として、2013年度に引き続き紫波町において、メソ会計のモデル化と実証化に必要な関連データを収集した。具体的には、紫波町におけるチップ原料の収集、燃料化(チップ製造)、チップボイラーにおける熱利用等を調査し、関連データを収集した。2015年度は、紫波町の木質系バイオマスを事例として、ペレットとチップをあわせたメソ環境会計をモデル化し、その実証化を試みる。 みっつ目として、森林整備・木材関連産業・木質系バイオマスの利活用を対象とする地域的サプライチェーン(SC)及び産業クラスターを調査し、メソ環境会計モデルの適用ができるかを検討した。具体的には、木材関連産業が地域に集積し、木工団地(森林のくに遠野・協同機構)を形成している岩手県遠野市を取りあげ、実地調査を行なった。森林と木工団地は隣接しているにもかかわらず、そのSCはあまり結び付いておらず、木工団地内の各事業者における相互のSCは調整されておらず、また、廃材等は地域内で十分に利用されていないことを明らかにできた。2015年度は、森林整備・木材関連産業・木質系バイオマスの利活用を相互に結び付け、これを地域的SC及び産業クラスターとして捉えて、事業者間・プロセス間の関係を整理する。そして、地域的SC及び産業クラスターを対象とするメソ環境会計の概念モデルの構築を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度は、岩手県紫波町において2013年度に収集したデータに基づき、ペレットを中心にメソ環境会計モデルの部分的な実証化を行なうことができた。2015年度は、ペレットとチップを含む木質系バイオマス全体を対象とするメソ環境会計のモデル化と実証化を行なうが、モデル化と実証化には、2014年度に収集したデータを用いる。現在のところ、いくらかデータが不足しているが、2015年度に収集できる見込みである。なお、チップ関連のデータ収集が2014年度になった理由は、紫波町では、2013年度にオガールプラザでチップボイラーが運転開始されたのにあわせ、2014年度から農林公社でのチップ化が始まり、チップの利活用が本格化したからである。 また、2015年度には、森林整備・木材関連産業・木質系バイオマスの利活用を対象とする地域的SC及び産業クラスターを提起し、それを対象としたメソ環境会計のモデル化を行なう。そのために、2014年に行なった岩手県遠野市における実地調査を継続して、馬搬を始めとする新たな森林整備、製材・プレカット等の木材関連産業、そして、製材廃材等の処理・利用の状況を調査し、関連データを収集する。 以上のように、メソ環境会計のモデル化と実証化に関しては、紫波町の木質系バイオマスを事例として、ペレットとチップをあわせ、原料の収集、燃料化、ボイラーにおける熱利用等を中心に行なう。また、森林整備・木材関連産業・木質系バイオマスの利活用を対象とする地域的SC及び産業クラスターに対するメソ環境会計として、遠野市の木工団地を中心に概念モデルを構築する。このように、トータルでみれば、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は最終年度であるから、①メソ環境会計のモデル化と実証化と、②地域的SC及び産業クラスターに対するメソ環境会計のモデル化を行なう。①として、具体的には、岩手県紫波町の木質系バイオマス事業全体を事例として、2013年度及び2014年度に収集したデータを用いて、メソ環境会計のモデル化と実証化を行なう。既に2014年度には、ペレットの燃料化とボイラーでの熱利用を中心に部分的な実証化を行なった。2015年度は、補足的なデータ収集とともに、ペレットとチップを含めたモデル化と実証化を行なう。また、②として、岩手県遠野市における森林整備・木材関連産業・木質系バイオマスの利活用を事例として、地域的SC及び産業クラスターを対象にメソ環境会計の概念モデルの構築を行なう。遠野市における実地調査を継続して関連データを収集し、森林整備・木材関連産業・木質系バイオマスの利活用を相互に結び付け、これを地域的SC及び産業クラスターとして捉えて、事業者間・プロセス間の関係を整理する。そして、①及び②ともに、地方自治体・関係事業者・地域住民等との対話を積み重ね、これらのメソ環境会計を、事業者・組織の経営改善や地域活性化にどのように利用できるかについて検討する。
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