2015年度は、次の2点について調査を実施した。まずひとつ目は、岩手県紫波町の木質バイオマス事業全体を対象とする包括的なメソ環境会計のモデル化・実証化である。具体的には、2013年度に試案として取りまとめたメソ環境会計の構築手順に基づき、2013年度から2015年度にかけて収集したデータを用いて、メソ環境会計のモデル化・実証化を行った。既に2014年度には、ペレットの燃料化とボイラーでの熱利用を中心に部分的にモデル化・実証化をしていたが、2015年度は、補足的なデータを収集するとともに、ペレット・チップ・薪を含む木質系バイオマス事業全体で包括的なモデル化・実証化を試みた。そして、木質系バイオマス事業が、地域に与える経済的な効果、環境的側面、社会的な影響等を総合的に明らかにできるようにした。メソ環境会計モデルは、木質系バイオマス事業の課題と改善方法ともに、紫波町環境課に対して提案された。 ふたつ目として、岩手県遠野市における林業・木材関連産業・木質系バイオマスの利活用を事例として、これらを地域的サプライチェーン(SC)及び産業クラスター(SC・クラスターと略す)と捉えて、SC・クラスターを対象にメソ環境会計の概念モデルの構築に取り組んだ。具体的には、遠野市の木材関連産業が集積する木工団地(森林のくに遠野・協同機構)を実地調査して、データを収集した。SC・クラスターのどこにどのような形で木質系バイオマスの原料があるのかを全体として誰も把握できていないという、木質系バイオマスの利活用を進めるにあたっての課題を明らかにした。また、富士ゼロックス(株)と共同で、木工団地の主要な事業者・組織(遠野地方森林組合、遠野市林業振興課を含む)に対して、メソ環境会計の考え方を説明し、SC・クラスター全体及び事業者・組織の経営改善や、地域化成果を図るツールとしてその導入を働きかける説明会・意見交換会を実施した。
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